六条の姫

城じゃ有名な話だった。
数々の戦で名を上げ、最期は毛利の盾となった六条家。
その生き様は




「『真(まこと)の武士』とまで謳(うた)われた…
並々ならぬ戦闘能力、行動力―――」

「…六条の出陣には必ず地の利があった」

「その通り、やはり知っていたのだね」



ふっ、と笑った野郎の態度が腹立たしくてしょうがない。
だが、次第にぼやけていたものが形を為していく。



「彼らは自分達の能力をひけらかしたりはしなかった。だから誰にも知られず勝利を重ねてこれたんだ。
自然を操り、津波、大嵐、竜巻、洪水、日照り――様々な自然災害を起こす力。天変地異だと当時は思われていたようだ」

「…」

「完全な一族、彼らの前に立ち塞がる者は排される」



元就を一瞥する。じっ、とこちらの様子を伺っていた彼を。



「先代は、君のお父上はさぞ六条を気に入っていたのだろうね」

「…」

「彼らさえいれば戦の勝ちは確実、それを手に入れていた毛利は大きかった」



元就は表情一つ、崩さない。切れ長の目で半兵衛を見据え続けていた。半兵衛は目を伏せ軽く笑って。元親に向き直った。



「だが、所詮彼らも人。異質な能力は負担が大きかった」




六条を恐れ、攻め入る事がなかった者達が城を攻めてきた。毛利から奉ぜられた六条の居城を。




「戦況は不利。六条は滅亡した―――筈だった」

「…」




ちらり、沙羅を見て目を閉じる。




「じゃぁ、どうして彼らは滅亡したのか」




突然滅ぼされたのか




「気になるだろう?元親君」

「…あんたから聞く必要はねぇと言った筈だ」

「君も聞き分けが悪いね」



元就を一瞥して。




「彼女の事になると」




しつこいくらい強情になる





「嘘などつかない、僕は有りの侭事実を話すさ。
―――下手な小細工などしないでね」

「…っ…、」




見下ろしてきた半兵衛と目が合って、歯を噛み締める。




「体への負担…具体的に何だと思う?」

「……っっ!!」



ドクン、と高まる音。顔を強ばらせ、半兵衛を見て必死に首を振り始めた。
言うな、と。
訴えている事は恐らくそう。




今更――遅いよ




「彼らには決定的な弱点があった」

「半兵衛ッ!!」



目を細む。




「その力は命――寿命と引き換えだ」



20101031
20120828改

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