暴かれた秘密
「六条だと…」
『――…六条が落ちたか』
『誠でございますか…?あの六条が…』
『……とうとう。―――如何なさいますか、国親様』
『“不屈の利刀”が消えた今、弘元殿が如何様に出るか
――その次第によろう』
―――昔、遠くから耳にした親父の言葉。
それがふと、脳裏を掠めた。
「―――文献に興味深い記述を見つけてね」
目を閉じた半兵衛。
『天地操る力
是(これ)
風雲巡らせ均衡保たんと与えられたし
彼の一族
その証したるもの
黒き紋
其の身体に刻まん――…』
「………」
「………」
「…彼女の一族は自然そのものを操る能力を持っていた。その常軌を逸した力は何百年も前から目を付けられていたようだ」
「…」
「遥か昔、日ノ本は草木も水もない土地だった。四季も乱れ、人は生きるのも困難だった」
文献にはこう書いてある
「自然の均衡を保つ力を与えられた人間―――それが彼らの血筋」
彼らは選ばれた人間。
使命を背負った人間。
「彼らの働きにより日ノ本は今の風土になったのだという…まぁ、伝書だけどね」
だがその血は長く続いた。後に六条と名高くなる程に。
「力は弱まってしまったが、記録として残る程だ。並み大抵じゃない」
「…さっきから訳分かんねぇ事を。日ノ本を司ってきた?んな事…」
「やはり信じられない、か。
まぁ無理もない。僕も最初書物全てを信用する事は不可能だったよ。
―――彼女を見るまではね」
「…、」
大きくなる青の瞳。
ぐっと皺を寄せる。
「斥候の報告にあった、彼女達の能力。
あの村にだけ突然雨が降り、日差しが差し込んでいた。時間も短いから大方ばれずにいたんだろう。村以外での使用を避けていたようだしね」
「…」
「2人とも、元は君の部下である蔵ノ介君から護身術を学んでいた。薬草の調合にも長け、村では頼りにされていたらしいね」
こいつ…そこまで
―――元親が言い返さずいるのを肯定と取ったのか、冷笑を浮かべる。
「何よりも、一度赴いてこの目で沙羅君の力を理解した。
人には出来ない業だ」
「…」
「そうだろう?」
君は何も感じなかったというのかい?
「この力、刻印―――人の為せる業じゃない」
人の形をした、化け物だよ
「テメェッ!!」
「…信じたくないだけだろう」
「……っ―――」
ンな馬鹿げた話
ある訳ねぇだろうが……っ
―――もう、十数年も前の話だ。
俺がまだガキだった頃、確かに六条家は存在した。中国・毛利に仕えてた大名家。まだ家督が毛利元就ではなく、父・弘元の時世だ。
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