手放してしまったもの

――ギャイィィンッッ!!



「!!」



身を退いて避けざるを得なかった。ギ、と音を立て刃が絡め取ったものは



「やはり君が持っていたんだね」

「何だと…どういう意味だッ…!」

「言葉通りの意味だよ」



睨み付けた。短刀は半兵衛の掌へと収まる。





「テメェそれを、
―――返しやがれぇえッ!!!」

「―――!?」



ガンッッ!!
ギィィンッッ!!!!



突然の衝撃と一段と力を増した元親に、半兵衛は眉を顰めた。



(こんな力…何処に……!?)



相変わらず片手で操る武器。
だが、つい先程まで見せていた疲労は微塵も感じさせない。
今の彼はまさに



ガンッッ!!!



“鬼”だった。





―――




(――軽い……)



その頃、輪刀に辿り着いた沙羅は驚きを隠せずにいた。
戦が行われている向こうは仕切られていて、此処から二人の様子は窺(うかが)い知れない。



(向こうは…どうなってるの…)



落ち着かない。彼の姿が見えないだけで、今の彼女を突き動かすには充分過ぎた。



――



輪刀を片手に空を蹴る。
これを毛利に渡せば、由叉は助けられる。
彼なら任せて大丈夫。
非情だと有名な毛利が此処までやってきて受けた傷はきっと。作り物でも何でもない。そう、感じたから。

彼の無事を確認したい。




『――…おいっ!!
待てよ!!沙羅!!!』



毛利が投げ飛ばされた時、引き止めてくれた貴方を振り払ってしまった。
―――貴方と敵対する毛利と、彼を好いてる由叉と
大切な貴方とで、揺れ動く想いはどうすればいいのか、選ぶ事が出来なくて。
――また貴方を突き放してしまった。
貴方は優しいから
こんな時ばかり、甘えてしまう。




(でももう、)




しないから





(だからせめてこれを)




罪滅ぼしとさせて…

――宙を蹴った。
彼が見えて。




「元親ァアッッ!!」

「……―――沙羅か!?」


「待ってて!!これを届けたら直ぐ加勢す――ッッ



息が止まった。体中を縛る衝撃。
沙羅は目を見開いた。


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