証
「何だと?」
「少なくとも私の方が今の貴方より速く動ける」
元就が眉を寄せた。
「武器を持てば行くのでしょう?」
止めたところで
聞かないのでしょう?
瑠璃色が元親達に向き、再び元就に戻る。
「貴方が奥に行くまで、私が時間を稼ぐ」
「共闘しろと申すか。我が受けると「そんな事言ってる場合じゃないでしょう!」
言うとは思っていたが。
どうしてこうも頑ななのだろう。今一刻も早く動かなければならないのに。
元はと言えば私が、私と由叉が撒いた種。
彼は助けに来てくれただけ。
ギュ――…
『僕が…知らないとでも?』
半兵衞と決着を付けるべきなのは私なのよ―――
伏せていた瞳が強い光を宿す。顔を上げ元就を見た。
「…ならば行け」
「!」
静かに言った元就。
「早々に取って参れ。我を待たせるならば、」
斬る
―――淡々と。だが随分と顔色が良くて。沙羅は苦笑する。
「…はいはい。そんな憎まれ口を叩く元気があるなら、もう大丈夫でしょうね」
本当に正直じゃない。
だが直ぐに表情を引き締めると、宙に駆け上がった。
―――
「―――…チィッ!!!」
気付いた一瞬。
認識出来たのは、半兵衛が目の前に迫ってやっとだった。元親は一太刀をすんでのところで躱す。
が、足場に下りないうちに再び迫る。
―――ギィィン!!
(……!)
思わぬ宙での攻撃に体勢が崩れる。咄嗟に懐に突っ込んでいた左手を抜いた。一瞬床に付く。が、直ぐ反転させて後方へ退いた。
「野郎ォ……
―――――――!!」
頬をさっと拭い、はっとする。
視線の先は
フワッ―……
舞い上がりゆっくりと落ちていく短刀。
『貴方に…これ』
「…!!!」
あいつから預かった刀。
懐に手を突っ込んで気付いた。ない事に。
これは彼女が心を開いてくれた大事な証。
(――――くそ!!)
馬鹿野郎だ。
俺は。
――舌打ちをし駆け出して。
床に落ちそうな刀。精一杯手を伸ばした。
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