彼女の力
「沙羅!!」
「!!」
その声に振り返って。見れば、纏わり付く程の兵を薙ぎ払った元親と、鋭い深銀の青き瞳と目が合う。素早く寄ってきた彼が私の手を握って。
「――…ぇ」
ぐいっ、と彼の元へ引かれた体はその力に勝てる訳もなく。
「お前の力、もっと見せてみな」
「……っ!!」
囁かれた一瞬、彼と擦れ違う刹那体は浮遊感を覚える。
「え、元―「ゥラアッ!!「きゃあぁぁぁあッ!!」
引っ張られそのまま、宙に放り投げられた。
「な、何ぃっ!?」
突然あらぬ方向から頭上に現れた人影に、敵兵達は硬直した。武器を持つ手が止まる。沙羅は宙でひらりと体を反り返して。猫のような目が吊って、元親を睨み付けた。
「この……
馬鹿ぁあっ!!
―――退いて邪魔ぁっ!!!」
「!?ぬおうあぁぁあ!!」
ゴオォォォォォン!!!
真っ逆さまに敵の群れへと落ちていく体だったが、敵に向かい力一杯片手を振り払った。すると突然、突風が起こって振り払われた方に敵は吹き飛ばされた。そして突風は竜巻を起こし、天井を突き破る。瓦も、兵をも吹き飛ばす。穴からは澄み渡る空が見えて。夜は明けていた。
「!…」
幸村が顔を腕で隠す。砂埃とともに吹き返しの強い風が入り、広間を駆け抜けるとふわっと消えた。
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