貴方を、意識する

「アンタ…沙羅つったか」



この薄暗い空間をひたすら進みどれ程経ったろう。上って走ってその繰り返し。その最中、不意に声を掛けられた。



「えぇ、…伊達政宗様ですね?奥州…筆頭――」



鋭い隻眼、整った鼻筋。弧を描く薄い唇。初めてこんな近くで見たしちゃんと話すのも初めて。

伊達政宗は年がまだ若いと聞いていたが、まさか自分同じくらいなんて。しかもいくつもの戦場を駆けてきたとは思えない程、端正な顔付き。完璧といっても過言じゃない。そして、さっきのような言動も平気でするある意味意地の悪い人…。

―――政宗は満足そうにクツリ、喉の奥で笑う。



「Ya.何今更改まってる?政宗でいい、堅苦しい口の聞き方はNo wayだ」

「の…」

「普通に喋りな、って事だ」



そっちの鬼の時と同じようにな、と付け加えて。ただただ圧倒する。



「わかったわ。――政宗」



そして政宗を見る度、さっきの騒動を思い出して。恥ずかしさと、悔しさで一杯になる。



「おぃ、独眼竜。いいか?何度も言うが―――こいつに手ぇ出すんじゃねぇぞ」



聞こえた不機嫌な声。元親が政宗を睨み付ける。話を混ぜ返すなと言っておいて一番混ぜ返しているのは元親な気がしてならないが。…黙っておく。
一方元親にしてみれば暫くぶりに戻ってきた彼女は、あまりにも様々な男に触れられ過ぎていたからそうせざるを得ないのだが。

政宗は引くはずなく。



「全く…大人気ない。貴方は気にしすぎよ」



元親のこんな行動に関しては黙っていられなくなってしまった沙羅は、あっという間に口が開く。やってしまったと固まった時には遅い。



「you are right.」



腕を引かれ背は政宗の胸にぶつかる。驚いて振り返り見上げた。



「ちょっと…」

「気が合うな、どうだ?」



この戦が終わったら一緒に来ないか?


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