寄りそうはお前という名の

「――…しっかりしやがれ沙羅!!!」
「!!」




その時、自分の名を呼ぶ強い声。愛しくて苦しくて。それでも聞くと頼もしくてつい安心させられる



貴方の声にまた救われてしまうの…――。




「…大丈夫だ、俺はお前を見捨てねぇ」





お前には見捨てられてばかりだがな

―――沙羅を肩越しに見つめながら言う元親に言葉を返せなかった。元親がふっ、と笑い肩を竦める。



「必ず帰るぜ、陸は窮屈でならねぇ」



そうだろ?―――



大海原、そこが俺達の進んできた場所



そしてお前が舞ってきた場所



一瞬一瞬で変化し、優しくもなり荒れ狂いもする海風―――まるでお前だと思った。



「………」



私には、窮屈―――その意味が良く分かった。



あの島で、あの村で、肩身狭く生きてきた私には。



妹を攫われ、養父を亡くし



涙を見せられる人が居なくなった。



そして村が襲われ私は本当に





一人になった。





でも…少しだけだけど…覚えてる。





誰かが助けに来てくれた事




爆発から守ってくれた




抱き締めてくれた大きな背中を。




―――貴方をまるで海のように感じた。



「なぁ、沙羅」



―――海と風、両方あって俺達は船を出せる



海があってこそ船もある



船は風があってこそ前へ進める



どちらか一つでも、欠けちまったら駄目なんだ



「ずっと俺の傍で舞えよ――…」



風でいろ、沙羅



「――…元、親…っ」



嬉しいのに

―――沙羅は肩を震わせながら、泣かないように堪えた。



「HA!随分とcoolな事言うじゃねぇか、西海の鬼」

「(くぅる…?)…う、うるせぇ」



言葉の意味は分からないが、政宗が茶化したのはわかる。改めて茶化されるのはあまり慣れないからか動揺して。どうも沙羅の前、改めて面と向かって言うのが照れ臭い。



(…敵わないねぇ)

「なんと熱い思い…この幸村甚く感動致したぁぁっっ!!」

「旦那…煩いよ」



旦那は旦那で相変わらずだし…。はー…、でも憎めない主だ事。

目を涙で溢れさせごしごしと擦っている幸村。佐助はふっ、と笑みを洩らした。




―――




「―――――…さてと」



暫く黙っていた風魔が政宗達と刄を交え始めていた。佐助は隣の沙羅を庇いながら言っ言う。



「実はアンタを守るようにうちの大将からも言われてたんだけど、」



自嘲めいた笑みを浮かべて。



「大仕事ができちゃったし…どうすっかな〜」

「私なら大丈夫、」



行くわ
―――そう言った彼女に佐助の目が細まる。



「貴方には本当に感謝してる。そして…手間を増やしてごめんなさい」



でも助けてくれたお陰で、私は生きてる



「感謝しても…しきれない。せめてこれを――…」



腿に装備した短刀の側から、折り畳まれた葉を取り佐助の手に渡した。



「――…これは?」

「強い塗り薬が調合してあるの。即効性があって少しは役立つと思う、」




無事に戻ってほしい。私の所為で誰かが傷付くのは見たくない。その為ならこんな薬、惜しくない。沙羅は軽く頭を下げると駆け出した。それを見兼ねたのか、政宗と対峙していた風魔は一瞬で姿を消す。沙羅の目の前に現れた。



「…!!、」

「――!!?馬鹿野郎っっ!!!」



一瞬硬直する、が。



(逃げてばかりじゃ)




いられないの
―――刀を抜いた。



「チッ!!」

「間に合わぬ……っ!!」



政宗、幸村も駆け出すが。



「―――っっ!!」



刃はもう直ぐそこ。


噛み合いかけた、刹那。

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