それぞれの思い

「そんな下らない会話はここでしないでくれないかい?耳障りだ」



沙羅の顔にくっと皺が寄せられる。少し怯えるような、しかし引き下がらないという意志がこもった瞳。



「あぁ、だったら早々にずらからせてもらうぜ!あんたをぶっ潰したらな」



元親の言葉に半兵衛がやれやれと溜息を零しながら



「予想はしてたけどこんなに早くやってくるとはね。
――政宗君、幸村君」



どこか余裕めいた笑みを湛えて、見下す目に一変する。沙羅はさらに眉を顰め半兵衛を見つめた。



「…なかなかうまくいかないね。いい案だと思ったのだけれども」



そう言った半兵衛の手が壁に伸びていて、握っていたのは取っ手が付いたもの。これを上下に操作していたのだろう。



「hm…、随分とセコイ真似してくれるじゃねぇか」

「面白いだろう?豊臣も新しいものに対応していかなきゃならないからね」



そしてこの日ノ本を他国の侵略にも動じない強い国にしなきゃいけない。



「俺達はこんなモンでくたばりゃしねぇ…だがな、」



前に出た元親の瞳がギロ、と半兵衛を捕らえて。眉根を寄せ怒りを顕に、顎で後ろを指した。



「こいつを…沙羅を巻き込むのは筋違いってモンだろうがッ!!ア゙ァン!?」

「元、親…」

「あんたらにとってこいつはなくせねぇ人材のはずだ。そいつを危険に晒しといて平然とまた手中に収めようったってそうはさせねぇ」



私の為に怒ってくれている、そんな姿が物凄く嬉しくて。遠く見える後ろ姿をただただ見つめていた。



「どうとでも言えばいい。僕には僕の考えがある」



今この時の為に全てを懸けてきた。邪魔は、させないよ。



「――OK?」



話は済んだか?と政宗が問う。その声に細められた紫の瞳が向いて



「俺達―――伊達を無視してもらっては困るな。
アンタの策ってのに、俺達も組み込まれてるって事なんだろ?」

「…さぁ、どうだろうね」

「hum…、だとしたら黙ってられねぇな」



政宗が刀を一本抜く。



「奥州に仇なす事ならこの独眼竜…、見過ごす訳にはいかねぇ。…アンタの策も豊臣のshowもそろそろお開きとしようぜ?」

「竹中殿!上田城への奇襲、そしてお館様への侮辱…断じて許せぬ!!武田の意…そして某を敵にした報い、今此処で晴らさせてもらう」



幸村も二槍を構える。



「…これ以上、てめぇの好きにはさせねぇ」



ぐっ、と強く握って、ジャラ…、と鎖が揺れた。
半兵衛を見据える。



「沙羅に下手な真似しやがって…
――この落とし前つけさせてもらうぜ」

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