真田主従

「旦那…遅いって、」



幸村は初めてこちらに気付いたかのようにむむ、と唸る。そして真っ赤な上着に負けない位、顔を紅潮させていく。



「は…、
破廉恥なぁぁぁっっ!?」

「――え?」

「うーん、気にしなくていいよ。…それより大丈夫だった?」



自分を抱える男に、幸村は遠くから槍を向ける。



「佐助ぇぇ!!!おおおおぬし……おおっ女子をだだっ抱…」

「いや…これは“抱えてる”の。分かる?旦「破廉恥極まりな「アンタの命令でしょうが」



…何か物凄いどす黒い渦中にいる気がすると、沙羅は悟った。その場の全員が、身動き出来ないままただそのやりとりを見ていて。佐助は困り果てる。



(ちょっとぉ…何で俺様こんな空気の中いる訳?あぁ、独眼竜とか見てるし…ってうわ…笑ってるし…)



いつもの事だが、まぁ



(天守閣で捕まっている女子をお助け致せ、って言うから命令通り助けただけなんだけど。他の軍の女だから反対したのも聞かずにさー――…)



はぁ、と溜め息一つ。人がいいのはいいが、困ったものだ。佐助が顎で政宗達を指すと幸村ははっとした。



「なぬっ!?何だこの瓦礫の山は!!
――…だ、伊達政宗!?
もう来ていたのか!?
くぅっ…、この幸村、一番槍を果たす事叶わじ…お館様に会わす顔がござらん…!!」



しゅん、と静まり返り沙羅は目まぐるしい幸村の変化に口だけ引き攣るように笑っていた。



(真田幸村…よね。武田の若き虎と呼ばれてるあの…)



“日本一の兵”

沙羅は黙って見るより他になかった。励ます佐助の顔は少し苦笑気味。



「旦那!!…気にすんなってー!
こっから取り返せばいいんだから」



(ホント、旦那って浮き沈み激しいよな…そこまで落ち込む事でもないでしょうに)



「―――そ…そうでござるな!!!うぉぉぉぉぉお!!!」



瓦礫を飛び越え政宗達と合流する幸村。唖然として、言葉が出ない。




「くっく…相変わらず暑苦しい野郎だ」

「ぬっ!!某を侮辱するか!!」

「hum…やるってのか?」

「――アンタが武田の、か。確かに暑苦しい野郎だな…」



三人の会話が聞こえてくる。

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