蒼竜
「くっ……!!」
「きゃあぁぁあっ!!!」
舞い上がる煙。半兵衛が視界から消える。
「沙羅!大丈夫か!?」
「――も、元親?大丈夫なのッ!?」
「まぁ…落ちちゃいねぇ」
ひとまず安心した。だが、
(何が起こった―――?)
誰かが乱入してきた、というのは間違いねぇが。
(敵か味方か?―――)
瞬間、元親の腕を誰かが握る強い力。晴れてきた煙の中に見た人物に目を疑った。
「あんたは……!」
「よぉ…久しぶりじゃねぇか」
青い装束、弦月の前立て。そして自分と異なる右目を黒い眼帯が覆う。不敵に浮かべた笑み。
「西海の鬼」
「独眼竜」
政宗は元親を引き上げた。悪いな、と彼に言う。
「…だが何故竜の兄さんがこんな所にいる?」
元親は立ち上がった。
―――尾張の織田信長、第六天魔王がまだ猛威を振るっていた頃だ。二人は織田包囲網に加わり各地の武将と共に織田を倒した。が、戦場では一度も顔を会わせず面識もなく。戦を終え初めて顔を会わせた。派手な戦が好きな政宗は自分と似た元親ととても気が合った。そして一戦交えたのだ。結果は引き分け、だがそれは政宗の腹心―――片倉小十郎の計らい。お互いの立場を考えた上での引き分けだった。
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