瞬.

「元親あああッ!!!」
「…ちぃッ!!」




死角から開いた事、体の平衡が崩れていた事、悪条件が重なって気付くのが遅れた。反射的に鎖を飛ばすも絡まない。



(…ッッ!?ちっ―――)



もうこれしかなかった。碇槍を落とす訳にはいかない。だから半兵衛に向かい投げる。一瞬驚かれたが、避けられ床に突き刺さった。



――ガ



そして辛うじて床を掴む。体が空中で左右に揺さ振られて。



「く…ッ、」



兵と戦わなければ自力でどうにかなっただろう。が、実際はそうじゃない。体は疲労と怠惰に襲われていて。



――腕が、震える。



「――…西海の鬼ともあろう君が、こんなにも簡単に引っ掛かるとはね」

「…るせェッ!!
テメェのような野郎はつくづく嫌になるぜ…ッ!!」



まるであの男。毛利元就を思い出させる巧妙な手口。そのような男の策に引っ掛かる自分にも、腹立たしさを感じずには入られなかった。



「君がどう思おうと勝手だ。だが僕達の邪魔をする時点で勝敗は見えている」

「………」

「折角野放しにしていたのにね。残念だ。…だが君の兵は大切に扱ってあげよう」



言うや否や半兵衛はしゃがみ込んで。



「沙羅君の事も、ね」
「――!!」



こいつ――…!!!



(笑ってやがる…)



――ギッ…



「―――ふざけんじゃねぇッ!!!野郎共も沙羅も俺が守る!!
てめぇにやるもんなんざ何もねぇッ!!」


「見苦しいよ、西海の鬼。今の君に出来る事は何もないさ――」



軽く目を閉じ苦笑すると、立ち上がって。関節剣が抜かれる。



「――――…此処で朽ち果てる以外はね」
「止めて!!!
お願いだから止めてぇえッ!!!
私何でもするからッッ!!嫌ぁぁぁあッッ!!!」




沙羅の声が聞こえた。縄を解こうと必死になって藻掻く沙羅の声。



(あいつ…!)



「ちッ…!!くそッたれが!!」



歯を噛み締め睨んでも事態は好転しないと知っていたのに。



「俺は…ンな処でくたばる訳にはいかねぇんだよ…っ」

「いや、終わりだよ」



どうする



「さよなら元親君」



――どうする



半兵衛が不敵に微笑む。剣がギラリと光った。



―――――ド――――



――息を呑んだ。その時、



「MAGNUM!!」



青い衝撃派が突き抜けた。



20100511
20120818改


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