愛しい故の障害

「――…この、馬鹿女が



しゃがれた声。



「豊臣の兵力なら分かってる、」



私は知ってる、こんな声を出すのは



「それでも、」



心の底から怒っている時…



「俺は」



―――隻眼が鋭くなる。



「死なねぇよ」

「…っ!」




心強いはずのその言葉が私の心に刺さる。苦しい。



「てめぇは戻ったら骨の髄まで仕置きだ」

「こ、来ないでって言ってるでしょう…?」



駄目…これ以上近づかないで。



巻き込みたくない。



傷付けたくない。



だからあの時、貴方から離れて傷付けた。



…いくら貴方でもこんな勝手なことをすれば嫌ってくれると思ったから。



なのに、なのに。



(これじゃ意味ないじゃない…―――)



顔を歪め俯いて。瞳が震える。その時、



――ン、



「っ!!――元親後ろ避けて!!!」
「!」


――キ"ンッ!!



風を切るような音。直ぐ、飛んできた刃が床を貫く。
身を翻しそれを躱した。



「てめぇ……っ、」



着地すると



「竹中半兵衛…ッ!!」



鞭のようにしなやかに、刄は床から抜ける。ギュンギュン、と音を立て持ち主の所へ帰った。物陰から現れた仮面の男。深い紫の瞳が元親の青の瞳を捕らえる。



「いらっしゃい、元親君。そろそろ来る頃だと思っていたよ」

[ 54/214 ]

[*prev] [next#]

[戻]




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -