迷いも全て
「野郎共おおおッ!!!」
子分より一足先に進んでいた元親は難を逃れていた。だがその足は突然姿を下へと消した仲間のもとへと引き返す。
(新手のカラクリだと…ッ、)
唇を噛んで。足場ぎりぎりの床に詰め寄ってしゃがみ込む。走った反動で自分まで落ちそうになるのをなんとか堪えて。
「ア、アニキィィィイ!!!―――…」
ほんの2、3数える間の出来事。なのにもうこの手は届く距離じゃなかった。時間が止まったかのように、ゆっくりと仲間の姿は小さくなっていく―――。
うまい事に下の階、また下の階とどんどん床が開いていた。これは一番下まで落ちるという事。
(この高さから落ちたらただじゃ済まねぇ―――)
冷や汗が背中を伝う。何故こんなにもこの戦、いつものように
「……」
俺らしくいられねぇ?
―――此処から身を捨て助ける事は出来る。でもそれはあいつを助けられる可能性を…。
(何…迷ってんだ、俺は…)
決めただろ
なのにまた―――。
「―――行って下せぇアニキ!!」
元親の耳がぴく、と動く。
「俺達は大丈夫っす!!今はアニキだけが頼りですぜ!!」
「沙羅を取り返せるのはアニキだけです!!」
「アニキ早く!!」
「野郎、共…」
馬鹿野郎が、自分の心配ぐらいしねェか。
きっと今の俺は有り得ねェ程情けねぇ面してやがる。
(頭が…
俺が迷ってどうする?)
頭が引っ張らねぇで誰がこいつ等を
「引っ張るってんだ…ッ!!」
そうだ、大切な事を忘れてた。目先の事に囚われ過ぎて。本当に大切な事を。
野郎共にあって俺になかったもの、それは。
―――『覚悟』だ。
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