がらがらっ、


自室で布団にくるまり、眠気が来るのを待って10分。そろそろ目がうとうとしてきたぞ、というとき部屋の襖が豪快に開いた。


ぴゅうーっと秋の夜風が部屋に入ってきて、俺の顔にかかる。


「山崎ぃー起きてる?」


そしてそのあとすぐに聞こえた声はずいぶん小さかった。襖もそのテンションで開けてくれ。


「たったいま起こされた」


「明日の朝食なにか知ってる?」


「おい無視か。ていうかそれわざわざ話すことじゃないだろ」


「サンマの塩焼きと肉じゃがだって」


「おーい聞けー」


俺は布団にくるまったまま、顔だけを襖の前に立つ彼女に向けていた。暗闇なので彼女の表情まではよく見えないが。


「じゃあさ、明日の厠の掃除当番って何番隊か覚えてる?」


「知らないよ、明日副長に聞けばいいじゃん」


彼女は俺の睡眠を妨害しに来たのか。どうでもいいことばかり聞いてくる。頼むから寝かせてくれ、俺は疲れてるんだ。


それから俺は彼女の質問をいくつか無視した。俺が眠ったら出ていくだろうと思ったから。目を閉じて彼女が帰るのを待つ。だが彼女は帰るどころか俺の部屋に入ってきた。彼女の足が畳の上を歩く音が近づく。


「なんかあたしの部屋くっさいんだよね。部室みたいな臭いすんの」


「‥ファブリーズしとけば?ないなら貸すよ、押し入れの奥の引き出しに突っ込んである。おやす‥ってちょっと!」


彼女がいきなり俺の布団に潜り込んできた。夜風に当たった冷たさで彼女の足は冷えている。マジ何しに来たんだ。


「私、リセッシュ派だからここで寝る」


「意味わかんねーよ!つーか女なのに部室みたいな臭いってどういうことだよ、俺でもそんな臭いしねーよ」


「小さいことは気にするなそれわかちこわかちこ〜♪って流行ったよねー、ゆってぃどこ行ったんだろう」


「知るか!早く部屋戻れよ」


俺の布団を自分の方へ引き寄せ、寝る体制に入る彼女。いやいやおかしい、なにがしたいんだ。


「いや。山崎と寝る」


「だからなんでだよ!臭いなんか我慢しろよ、」


「うるさいうるさい!絶対ここで寝る!」


駄々をこねる彼女は布団の中で足をジタバタ動かす。いくつだよ。


「あーもう!わかったよ!そこで寝なよ、俺はもういっこ布団出すからそっちで寝る」


このままじゃ俺が寝れなくなる。すっかり目が覚めてしまった体を起こし、明かりを付ける。彼女が眩しそうに目を細めた。


「ダメダメダメ!一緒に寝てよ」


「はぁ?いい加減にし「怖いんだもん!」


彼女が上半身だけ起きて俺の枕をぎゅっと胸の前で抱き締めた。なんだよそのポーズ、無駄に女の子らしいぞ。


「怖いってなにが?」


「沖田隊長に無理矢理見せられたホラー映画。ひとりで寝れない」


いまにも泣き出しそうな彼女に俺はもうなにも言えなかった。彼女の怖がりは副長よりもすごいことを俺は知っている。隊長の嫌がらせだろうけど、彼女へのダメージは相当だ。さすがに少し可哀想になった俺は髪をぐしゃりとかいて彼女を見た。


「じゃあ布団くっつけてあげるから。それでいいだろ?」


すると彼女はうん!と初めて笑顔になった。急に素直になったな。


「ねぇ、山崎?」


「なに?まだなにかあるの?」


「枕。洗った方がいいよ」


「うるさいよ!」





部室よりはマシだろ、

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