眼鏡を新調した。新学期に合わせてフレームの色を好きな色に変えた。


言っておくけど新八くんの話じゃありません。


「お、名前も2組か」


一足先に新しい教室にいた土方くんが、私に気づいた。会うのは3月の終業式以来だったので、髪切ったんだとかやっぱりかっこいいなとか、一瞬で色んなことが頭に浮かんだ。


「うん、よろしくね」


ぎこちなさ満点であろう私の笑顔に土方くんの眉がぐにゃりと歪んだ。


「何だァ、んなかしこまって。緊張してんのか」


「き、緊張っていうか。クラス変えってドキドキするじゃん」


くわえて土方くん、きみにも私はドキドキしています。2年連続同じクラスになれたことが嬉しくて嬉しくて仕方ない。


私、クラス発表の張り紙を見て自分のより先に土方くんが何組か探したんだよ。それで緊張しながら自分の名前を探して、同じ2組に私の名前があったときの安堵と歓喜は‥想像絶するものだった、なんて引かれるから言わないけど。


「そうか?噂じゃ担任、また銀八らしいぞ。そんなのクラス変えの意味ねぇよ、」


へぇ、そうなんだ。土方くん、銀八先生と仲悪いからなぁ。私は土方くんと同じクラスなら担任なんて誰でもいいよ、怖い先生だって頑張れるもん。


「お前の席、どこ?」


「えっ、あぁ‥えーと、あの一番後ろ」


ずっと教室の入り口で突っ立ったまま話していた私たち。黒板に書かれた席順を確認して自分の席を指差した。ていうか私一番後ろなんだ、ラッキー。


「俺の隣だな、」


土方くんは私の席が分かると一瞬驚いたのか目を見開いた。そしてそのあとすぐ小さく微笑んだ。


「(あ、私の好きな顔)」


薄い唇が薄く弧を描く。眩しい笑顔とは言えないけど、その微笑みは私の中で犯罪級にかっこよかった。私は土方くんのたまに見せるこの表情がとても好きで。


「(まさか新学期早々、見れるなんて‥)」


席も隣だし本当今日はラッキーだなぁなんて思いながら土方くんと席についた。


土方くんは私の左隣。教室を見渡すと窓側の前の方の席に座る沖田くんがこちら(おそらく的は土方くん)へ輪ゴムを向けていた。なるほど、沖田くんも同じクラスなのね。


「なぁ名前、」


かばんを机の横にかけていると土方くんが私を呼んだ。はいはいと答える代わりに顔をあげると土方くんは体ごと私を向いていた。


「‥‥‥」


「‥え、何?」


私を見たまま、小さく首を傾げる土方くん。何?なんか変、鼻クソついてる!?


「‥‥‥」


止めてェエ!見つめられたまま沈黙はヤバい、緊張しちゃう。おおおお沖田くん、今ならそれ(輪ゴム)打っていいよ、


「‥‥‥」


目を合わせたまま、目をそらすこともできないまま、土方くんの綺麗な手がこちらに伸びてきた。


え、何なにナニNANI◎%≠£〒#@!?


ドキドキうるさく鳴る心臓の音を体で感じていたらカチャ、という音とともに視界が一瞬ぐらついた。


「眼鏡変えたか?」


「え‥あ、うん」


土方くんは私の眼鏡を私からはずした。さっきまで私の一部だったそれ(新八くんの"一部"とは違う)は土方くんの手中。少しぼやけた視界に見える私の好きな色を、土方くんが持っている。


「いい色だな、名前っぽい」


「ほ、んと‥?」


土方くんが頷いた。


「この色好きなのか」


「うん、‥大好き」


たった今、私の好きなその色が、大好きな色になったよ。確かめるように口に出してみたけど、やっぱり照れ臭いね。



レンズからはみ出た恋
「ってぇ!何だ‥輪ゴム?」
「新学期早々キモいことすんな土方」
「総悟ぉおお!」

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