放課後の教室でテスト勉強をして1時間、神楽の集中力が切れた。


「名前お腹空いたアル、何か寄越せヨ」


「何かって?お菓子とかないよ」


「いつも持ってんだろ、何でこういうときに持ってないネ」


使えない女アル、と教科書を閉じた神楽にイラッとしていたらお妙ちゃんがまぁまぁと仲裁に入った。


「購買に買いに行きましょう、確か今週から肉まん売ってるらしいわよ」


「「肉まん!?」」


お妙ちゃんの提案に食いつく私と神楽。肉まん‥もうそんな季節になったのね、なんて窓の外に見える丸裸の木を見ながら思った。


食べたい、すごく食べたい。はふはふしながら食べたい。


「じゃんけんで負けたやつが行くネ、」


三人とも肉まんが食べたい、けど買いにいくのは面倒だという意見が一致しているようなので流れは自然とじゃんけんで決めようということになった。


「「「最初はグー、じゃんけーん‥」」」










「すいまっせぇん!肉まん3つとあんまん1つとピザまん2つ」


チクショー、今日の誕生月占い2位だったのに何で一発負け?ていうか神楽とお妙ちゃん、私が負けたからってついでに他のも食べたい買ってきてと言ってきた。神楽なんて計3つだし、私は1つしか食べないのに。


「いっぱい食べるのねぇ」


案の定、購買のおばさんに驚かれじゃんけんで負けたんですよーと考えていた返事をする。おばさんが肉まんたちをひとつずつ袋に入れていくのを見てお腹の虫が鳴った、あーおいしそう。


肉まんはやはり人気なのか、私が買う3つで終わりのようだ。あっぶなー、もし買えなかったらあの二人、確実に学校の外のコンビニまで買いに行かせる。


やっぱり2位だからラッキーなのかもなんて思って待っていたら後ろから肉まんひとつ、という声が聞こえてきた。


え、嘘ごめんなさいもう完売ですと思いながら、横へやって来たその声の主をチラリと見るとそこには土方くんがいた。


「ひ、土方くん」


驚く私に土方くんはおう、とリアクションゼロな反応。土方くんは剣道着を着ていて、教室で見る制服姿とはまた違ったカッコよさを醸し出していた。


「まだ帰ってねェのか」


「あぁ、うん。教室でテスト勉強してて‥土方くんは部活の途中?」


そう聞くと土方くんはあぁ、と頷いてから休憩だけどな、と付け加えた。


「肉まん買いに来たんだが、もうねェか‥」


私が買ったことには気づいていないのか、土方くんは空になった肉まんのケースを眺めて呟いた。


こっ‥これは、マズイ。土方くんが食べたかった肉まんを買い占めたのは私だと知られたくない。しかも超買ってるし!じゃんけんで負けたとは言えそんなこと言わないとわからないし。バレずに帰れるかなと冷や汗がふきだす。


「あぁ‥うん、売り切「はい、肉まんとあんまんとピザまん、6こだね」


「「‥‥‥」」


タイミング良くか悪くか、おばさんが肉まんが入った袋を差し出してきた。土方くんの視線が突き刺さる。
イ、イヤァアァァア!










「‥いいのか?」


購買を出たところで、私と土方くんは立っていた。そして土方くんの手には私の肉まん。


事情を話して、これがすべて私の胃に入るわけではありませんと分かってもらったところで私は土方くんに自分の肉まんを渡した。


「うん、土方くん部活でお腹空いてるでしょ?」


土方くんに肉まんあげるなんてテンションあがるもん、私は食べれないけどそれ以上に嬉しい。


「でもお前、勉強してんだろ?」


「大丈夫、まだいっぱいあるし」


ほら、と神楽とお妙ちゃんのぶんしか入っていない袋を見せてにっこり笑う。自分の空腹より土方くんとのコミュニケーションの方が大事だ、うん。


そんな私に土方くんはフフッと笑ってからサンキュ、と持っていた肉まんを顔の横まで上げた。


「‥‥‥」


肉まん片手にこんなカッコいいのは土方くんだけだ、肉まんを胸キュンアイテムにできるも土方くんだけだと、心奪われつつ、どういたしましてと頷いた。


何かもう満足、お腹いっぱいかも、


「ん、半分」


そして突然渡された半分の肉まん、え?


無言でただ受けとれアピールをするので、土方くんから肉まんを受けとった。これくれるの?


「食えよ」


「え、でも」


「もとはお前んだし」


「あ、ありがとう」


固まったままの私をよそに、自分の半分を一口でパクリといった土方くん。


「うめェ」


私も冷めないうちに肉まんにかぶりつく。ふわふわとした食感と味付けされた具たちが口の中に広がる。おいしい。


それに、土方くんと半分こしたんだ‥これは特別な肉まん。


「おいしいね」


「あぁ、やっぱ冬はこれだな」


満足げに微笑む土方くんがかっこよくて、照れを隠すように残りの肉まんを口に放り込んだ。


少し冷めたそれは、熱く火照った私にはちょうどいい。



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