「おい起きろィ、いつまで寝てんだ」


「ん‥わたし今日非番なんですほっといてくださいよぉ」


冬の朝、意地悪な隊長に布団をめくられた、ヴァサァアっと豪快に。


「たいちょ、今の行為は冬にされたくない嫌な行為ランキングでおそらく1位だと思います。そんでもってわたしが何で寝たいかわかりますか?昨日の夜、副長のために隊長と落とし穴を掘ってたからです、ていうか掘らされたからです」


おかげで腕が筋肉痛だ、こんにゃろう。


「寝たいわりに喋ってんじゃねーか。まぁいい、報告だけしにきたんでィ」


「布団めくる意味あったんすか」


ひっくり返った布団をひっぱり、まだ温もりの残るそれにくるまる。


「昨日の落とし穴、ヤツが落ちる前にほかのやつが落ちた」


「ザキとかですか?」


「とっつあんだ、」


とっつあん、とっつあん‥今すぐ眠ってしまいそうな頭のなかでその言葉を繰り返して該当する人を探す。


その人物が分かったのと、わたしの眠気がサァアっと覚めるのも同時だった。


がぁばっ、と布団をめくり起き上がる。隊長の顔が目の前にあった。


「とととととっつあんってアレですか、グラサン・拳銃・親バカといえばあの人!のとっつあんですか、我らが警視庁官松平片栗虎ですか」


「落ち着け、おまえの単独行為だって言っておいてやったんでィ」


「上司だけど言わせてください何してんだァア!どこも落ち着けんわ!」


ちょ、ヤバイよ!いくら狙ってなかったとはいえ上司を落とし穴?いや副長も一応上司だけれども。あのお方は上司でもレベルが違う上司じゃないか。わたしみたいな平隊士が何やらかしてんだよ、何で穴掘ったのわたし!戻せ、時間を戻してくれ!そして誰かわたしをたすけてくれェエ!


「話はこれで終わりじゃねぇ」


パニクるわたしの肩をつかむ隊長。ニヤリと笑う表情がとてつもなく怖い。背中に汗が流れるのを感じた。


「処分はなんですか減給ですかクビですか生き埋めですかそれとも知らない星に売り飛ばさ「安心しろ、俺がうまく言ってやったんでィ」


「何を?わたしの弱味ですか?ハッ!まさかわたしのお母さんになにかするつもりですか!田舎でのんびり生きてるお母さんを?何にも悪くないのにそれはあんまりです隊長、わたしはどうなってもいいんで‥いやほんとうはよくないけどでもお母さ、いだぁっ!」


殴られた、グーで。うるせぇと言いながら隊長はため息をついた。何ため息ついてるの元凶はおまえだよ!と言ってやる、もちろんインマイハート。


「今日はなんの日だ?」


「わたしがここで過ごす最後の日?」


「誕生日でィ、とっつあんの」


「なおさらダメじゃないですかァア!」


ハッピーバースデーどころの騒ぎじゃないよこれは。嘘だと言ってほしい。誰かあのドッキリ大成功のパネル持ってきてくれ。


「名前が誕生日を祝いたいんだが、良いものがなかったから穴を掘って驚かそうとしたってことにしたんでさァ」


「どんな祝い方!?原始人でもそんな祝い方しないですよ、おいしい木の実とか採りにいきますよ」


「で、とっつあんは何て言ったと思う?」


「‥何て言った、んですか?」








「結局怒られるんじゃねぇかァア!ていうかもう3秒以上経ってるよね!」
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