「名前、花火やるか?」


パトロールを終えてそのまま食堂へ向かった、パトロールの途中ドンキに寄って買った花火を持って。


予想通り、名前は食堂で麦茶を飲んでいた。俺が花火(ファミリーパック)を見せると大きな目がさらに大きく見開いた。


「やったぁー!総悟だいすきぃー!」


その場で万歳と両手を上げて喜ぶ名前、やってることはただのバカだがコイツだから可愛いと思っちまう。


「あたしライターとバケツ持ってくるね、先始めちゃダメだからね!」


風呂上がりの濡れた髪もお構い無しに名前は食堂を出ていった。バタバタと走る足音を聞きながら俺も食堂を出る。





シャァアア‥


ライターで火をつけるとそれはたちまち煙を上げながら眩しいピンク色に光った。
きゃあーと騒ぐ名前の喜ぶ顔が花火によって明るく照らされる。そんなコイツを見て俺は自分の花火を遠ざけた、照れた顔を見られまいと。


「きれいだねぇー今年はつ花火ー」


ピンク色から緑色に変化していく光よりも名前の楽しそうな表情の方がよっぽど綺麗だ。幼いくせに時折見せる女っぽい表情に俺がどれだけ惑わされてるか、


「総悟ー次はこれがいいー何色かなぁ」


目の前で2本目の花火を差し出すコイツは知らねぇんだ。
にっこり微笑むその表情が、俺の名前を呼ぶその声が、俺の中で花火よりも激しく綺麗に咲いていることを。


「なァ、これ付けよーぜ」


「えー!それロケットじゃん、副長に怒られるよ」


「上等でィ、あいつの部屋に打ち込んでやらァ」


そう言ってライターを手にとる俺に触れた、生暖かい手。


「だーめ。怒られたらもう総悟と花火できなくなっちゃう」


ね?と首をかしげる名前。濡れた髪に眠そうに見えるすっぴん。優しい微笑みにその手。
いまのコイツは無敵だと、殺されると思った。













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