※ミツバ編のあとの話





「どうしたの、その頭」


久しぶりに退が私のバイト先である文房具屋にやってきた。そして20年間生きてきて初めてこの目でアフロを見た。


「いや、ファミレスでちょっと」


久しぶり、なんて声をかけられたわけだけど、顔の倍以上あるアフロ頭が退だと気づくのにしばらくかかった。ただでさえ地味な顔が完全に髪型に持っていかれている。のっぺらぼうがアフロのカツラをかぶっていると言われても頷ける。


ていうかファミレスでちょっと何したらそんな劇的ビフォーアフターできるんだ、


「墨汁切れちゃってさ、ついでに新しい筆も買おうかなと思って」


彼はいつものように墨汁を5つほどまとめ買いするらしい。棚に陳列された墨汁たちを手にとっていく。


いつも通りの退だ、頭以外は。


退自身気にしていないのだろうか、そのヘンテコなヘアースタイルに。狭い店内の半分を陣取っているであろうチリチリ頭があっちへ来たりこっちへ来たり。


何をどう突っ込んでいいかわからないので、いっそのこと突っ込むのはやめて普通に振る舞おうかと頭では思うものの目線はアフロ、かなりの確率でgo toアフロだ。


「はい、お願い」


カウンターにおかれた墨汁と筆が2本。相変わらず気になって仕方ないアフロをチラ見しつつ会計を出す。


「あ、ポイントカードあるんだった」


お金を預かり、お釣りを渡すと退は思い出したようにそう言って自分の頭に手を突っ込んだ。


‥え、突っ込んだ?


いやいや待て、まさかそこから?


「いつもここから」


心の声が聞こえたのか。ていうかあんた、いつもは財布から出してるよポイントカード。まぁそんなことはどうでもいい、それより本当に頭から出てきたんだけど、ポイントカード。しかもいつもここからってお笑い芸人じゃんそれ。


これは突っ込むべきだよね?


「悲しいときーアフロ頭からポイントカード出てきたときー」


「悲しいときーアフロ頭からポイントカード出てきたときー」


「‥‥‥」


「ポイント押して?」



アフロ来店
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -