休憩室は事務課のオフィスから離れた場所にある。高めのヒールを履いてきたことを後悔しながら廊下を進む。これで休憩室に沖田がいなかったらキレてやる、退に。

「書類、沖田くんに任せてあったのに」

こういう問題が起きたとき、後輩のミスは先輩のミスでもある。今まで犯してきた自分の失態も土方先輩がフォローしてくれてたんだよなぁと、同じ立場になって最近分かるようになった。だから以前より土方先輩を怖いと思うこともなくなってきた。いや正しく言うと怖いことには変わりないんだけど、その中に見える先輩としての優しさとか責任が見えたっていうか怖いだけの人じゃないんだって。まぁ優しさって言っても0.38くらい(100%中)だけど。





「係長に出しやした」

休憩室に沖田くんはいた。もう休憩終わってるんだけど!とキレたかったがとりあえず捕獲は成功したのでそれは後からにしよう。今は書類が優先である。だが沖田はコーラを飲みながら書類の不足について知らないと言った。

「(出しやした、じゃないでしょうが)」

何がムカつくかって、悪びれたり心配する様子が全くないことだ。入ってきたときからこういう態度は変わらない。まぁまだ2ヶ月目だけどな。

「鈴木先輩も昨日最終チェック確認してたでしょう、」

さらにムカつくは、ため息を吐きながら上司である私にやれやれという表情を向けてきたことである。今、私の額にはおそらく怒りマークが出ているであろう。もうゆとりとかそういうレベルじゃない。何で私呆れられてるの?

「でもそれがないから言ってるんでしょう。明日の営業会議で使うものだから早く探すよ」

「何言ってんですかぃ、明日は土曜日ですよ」

「何言ってんの、営業は土曜も出勤なの」

2ヶ月経ってそんなことも知らないのか、怒りより呆れの方が大きかった。だが今は後輩の指導よりも書類だ。先に休憩室を出てエレベーターを待っていると遅れて沖田がやって来た。ポケットに手を突っ込んで首を鳴らしている。

「沖田くん、もっと真剣に仕事してよね」

「鈴木先輩、化粧濃いですぜ。給湯室のときから思ってたんですが」

「は?」

今お前のこと言ってんだけど!私のメイク事情なんてほっとけバカヤロー。

「デートか合コンか知りやせんけど、金曜日のOLは仕事そっちのけでさァ。」

「‥それ私に言ってんの?」

腕組みをしながら横をチラリとみる。沖田はエレベーターの階数表示を見ていた。

「ただの新入社員の独り言でさぁ。ヒール高いの似合ってねぇー」

「沖田ぁあ!」

本気でヒールの角で沖田の頭を刺したい衝動に駈られた。

土方先輩、私ってここまで生意気じゃなかったですよね。この子に比べたらまだ可愛げありましたよね?

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