ほら、みんなで笑おう
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「あ、マナちゃん」


「‥きさん」


「きさんって何?俺の名前ド忘れしたよね」


沖田と無言のまま旅館へ戻るとロビーで山崎さんと出くわした。お風呂上がりらしい、私たちと同じ浴衣を着ていた。


「あの、山崎さん」


沖田からお風呂で聞いたこと、山崎さんも私をちゃんと護ろうとしてくれてたこと、ありがとうって言わないと。


「ん?」


山崎さんはいつもと変わらぬ態度で私の言葉を待っていた。一応、気まずい感じがあると思っていたけど彼は普通だ。私の中ではまだお土産屋さんで会ったときの空気なんだけど。山崎さんはもう忘れたのかな、


「あの、私‥「あー!いたいた」


隣に沖田がいる中でお礼を言うのは気恥ずかしいと思っていると私の声はどこからかやって来た大声に遮られた。ハッとして声のした方を見るとお母さんとのり子さんが手を振っていた。しかもその後ろには近藤さんと土方さんもいる。おいマジか、全員集合じゃねーか。気まずい、沖田とは仲直りしたけどこれは気まずいィイ!


「沖田くんとどこ行ってたんだい、ん?」


近づいてきたお母さんが私の顔を覗き込む。いきなりその質問んんん!?一緒にお風呂だよ、なんて危ないこと言えない!夜空見に行ってました、なんてロマンチックなこと言えない!プレゼントまで貰いましたなんて恥ずかしくて言えねぇええ!


「沖田くんと仲直りできたみたいだね」


「な、」


のり子さんがニヤニヤ笑いながら親指を立てた。何それ!良かったねってか?うざい、このおばさんコンビうざい!若者のいざこざに首突っ込むなよ!


「おーそうか、良かったな総悟!」


近藤さんが沖田の肩をパンパン叩く。いや何で近藤さんまで参加?恥ずかしいんだけど。


「藤堂がどうしても仲直りしてくれって裸で土下座してきたんでさァ、」


「ハァア!?どんな嘘ぶっこいとんじゃ!」


沖田が女風呂に入ってきたくせに!何シラッと嘘を吐いてんだ。プレゼントをくれて優しさ見せたかと思えばこの有り様‥本当に油断できない男だな。


「総悟はお前しか手に負えねーよ」


「いや私も手に負えねーんですけど」


土方さんは煙草に火をつけながら、やれやれといった表情をみせた。ていうかこんな男、もう手に負えるとかそういうレベルじゃないし。


「あり?のり子さん温泉入りやした?」


「夕飯食べ過ぎちゃってねぇ、もう少ししたら入ろうかと思ってるんだけど」


「へぇー肌ツヤツヤなんで、もう入ったかと思いやした」


「あらまぁ総悟くんったら冗談がうまいねぇ」


「いや本当でさぁ、こいつ見てくだせぇよ、風呂入ったのに何も変わってないんですぜ」


「黙れカス」


沖田が私を指差す。何でわざわざ私をけなすかな!しかものり子さん別にツヤツヤじゃねーし、いつも通りカサカサ肌なんですけど。私の方が絶対きれいな自信あるんですけど!


「沖田くんいい子だねぇ、売店でアイスでも食べるかい?」


そんな沖田にお母さんが懐から財布を出す。いや何でお母さんが感心してんの?しかもアイス!?ずるいぞ私も食べたい!


「こいつに買ってあげてくだせぇ、お母さん」


「‥‥‥」


すると沖田がニッコリ笑って私の頭に手を乗せた。な、何がお母さんだコルァ!良い子ぶりやがって‥!おばさんポイントどんだけ稼ぐ気だァア!マジむかつく!本当むかつく!


「ア、アイスなんかいらないもん!」


「とか言って本当は食いたいんだろィ?意地っ張りはいけねーや」


お前は黙ってろ!ぶりっ子!性悪!変態ハゲ野郎!


「二人の仲良しこよしなところ、久しぶりに見たよ」


のり子さんが微笑みながら睨み合う私たちを見ている。どこも仲良くねーよ!沖田の猫かぶりキャラのせいで、さっきプレゼントをもらったときの感動は薄らいでいた。


「本当ですなぁ、やっぱり二人はこうでないと」


のり子さんの言葉に頷く近藤さん。お母さんや山崎さんも笑っている。土方さんも安心したように煙草をふかしていた。


‥何、あんたらの見守ってました感は。子供を見るようなあたたかい眼差しは何だ。そんなに私と沖田の仲直りをみんな期待してたの?そんな心配かけてたの?


「隊長とマナちゃん、付き合っちゃえばいいのに」


「「ぶっ殺すぞ!」」


こんな祝福ムードいらないんだけど!山崎さんの上から目線も超いらないんだけど!ていうか山崎さん自体いらないんだけど。


「それはひどくない!?」


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