早起きしても得はなし
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「5250円になります」


眠い、非常に眠い。店内に最新の曲が流れるのを微かに聞きながら財布からお札を出す。


開店してまだ数分の店内には意外に客が多い。さすがGW。私も今日から5連休だ。


「あ、お母さん?買えたよ、うん。普通に売ってたから別に早く行かなくても買えたよ確実に、うん」


本当は昼まで寝倒すつもりだった。弁当屋の朝は早いから寝れるときに寝ておきたい。そんな私の淡い夢はお母さんのDVDを買いに行くというミッションに消された。


おかげでいつもと変わらない起床時間だコンチキショー。


しかも店が家から歩いて行ける範囲ではないので、移動に30分かかった。何で商店街にないんだ、何のための商店街だ。


「うん、じゃあねー」


でも無事、DVDが買えた。初回限定版についてきたポスターを持って帰るのはめんどくさいけど。お母さんには明日届けると約束したので今日の予定終了、さっさと帰って昼寝し‥


どんっ、


店内を出ようと携帯をいじりながら歩いていると誰かと肩がぶつかった。


「あ、すいませ‥げっ」


携帯をいじっていて前を見ていなかった私が悪いと思い、謝ろうと相手を見上げると見知った顔が。


「またオメーか、」


そう、この間病院でもぶつかった‥なんとかなんとかクンだ(名前忘れた)。でも性格がひん曲がっていることだけは覚えている。ヤツはため息をはきながらやれやれ、みたいな表情をしている。


「こっちのセリフだよ!ぶつかんな、バカ」


何でこんなところで会わなくちゃいけないんだ、しかも何でまたぶつかってるんだ。


「オメーが携帯触ってたからだろィ、そのまま歩き続けろそして交差点で轢かれて死ね」


で、出たァア!ヤツの毒舌。よくもまぁそんなすぐに暴言が吐けるな、ある意味尊敬する。でも私だって負けない。


「お前もそのまま歩いて棚にぶつかれそして落ちてきたCDとDVDに埋もれて死ね」


「どこぞのマヌケな豚じゃねぇからよそ見なんかしねー」


「お前がしね」


中指をヤツの顔の前でつき出す。あまりにも大きな声だったからか周りの客や店員の視線が痛い。


「それ以上言ってみろィ、そのきったねぇ中指へし折る」


「フンッ、してみろってんだバーカ」


バキッ、


「え、」


バキッて言った?何が?おそるおそる自分の手を見る。親指、人差し指、中指、なかゆび‥!?


「あ、あぁ‥あ‥」


ヤツにつき出した中指がありえない方向へ曲がっている。1本だけイナバウアーしてるゥウ!


「次はどの指でィ」


ニヤリと笑うヤツはどうやら本気だったらしい。いやおかしいよ!何で本当に折る?チューペット折るかのようだったよ、こいつ人間なの?思うことや言いたいことが溢れる中、いまになって痛みが走り指が震えた。


「ぎィイァアア!」


最新のポップチャートが流れる店内に私の悲鳴が響き渡った。


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