寺門通4thシングルよろしくね
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「速報です!たった今、この事件の主犯であるおっとっ党の間黒容疑者から声明が届きました。声明によりますとこの後、彼らの幕府に対する要求と人質の3人の映像を流すとのことです。現場には依然緊迫した空気ですが、人質の方の安否や彼らの要求によって進展があるのか、事件は解決するのかに注目が集まっています」

‥‥‥

‥‥




「助けて、帰りたい、何でも言え。貴様は演者だ。どれだけ我らが恐ろしい存在か伝えろ」


「‥‥‥」


間黒はもうすぐ始める中継のために準備を始めていた。設置したカメラの前に私たち人質を座らせ、まるで乱暴にされたかのように私の髪を乱し、着物を着崩させた。襲う度胸もないくせに、こんな小賢しい真似しやがって!


「度胸がないんじゃない。貴様に襲いたいと思わせるような魅力がないだけだ」


「う、うっさいな!こっちだってそんな鼻くそつけたじじいお断りだよ!」


ガシッ、


するとそれまで感情をあまり表すことのなかった間黒が私の前髪を掴み引っ張った。思いっきり掴まれた痛みで顔が歪む。


「俺が何もしないと思っているのか。立場を考えろ、貴様のようなガキはいつだって殺せるんだ」


髪を掴まれたまま、私が間黒を睨みあげると彼は無表情に戻り、乱暴に私の髪を離した。さっきから口だけじゃん、本物の銃撃つ気もないのに。全然怖くないんだからな!これ以上、毛根が死滅するのは避けたいので言わないでおくけどな!!


「さぁ、ショータイムの始まりだ」


「‥‥‥」


そのあとすぐ間黒の仲間がカメラを回し始めた。とうとう中継が始まるらしい、ていうかショータイムの始まりだって‥前もあったよね、聞いたことあるよその台詞。違う事件の違う犯人だけど。何?犯人はそれ言いたいの?決まり文句なの?


「あ!画面に映像が映りました!彼らの犯行声明が読まれる模様です、人質らしき人物も画面中央に確認できます!えー、左2人が来日中の大使でしょうか?画面右に映る女性は何かあったのでしょうか、髪や着物が乱れています」


「日本の腐った幕府よ、人質を生かして返して欲しくば、我らおっとっ党に属しながら囚われの身である35名の釈放、そして真選組の解散を要求する」


間黒は笑うことも興奮することもなく、冷静にそして静かにカメラへ向かって話し始めた。一方テレビ画面には私と大使たちの映像がリアルタイムで流れている、私がモソモソと動けば画面の中の私が少し遅れてモソモソ。何か面白い、


「人質は無事だ、しかし我らの要求をのまなければ迷わず殺す」


「だからあんた、そんな度胸ないでしょ!皆さーん、この男ただのカロリーメイト好きのおっさんですからねー!」


妙に格好つける間黒がムカついたので、私はカメラに向かって叫んだ。するとバシコンッと何やら板のようなもので頭を叩かれた。ってぇな!そんな板どこにスタンバらせてたんだよ。


「何を言っている」


「あんた何でも言えって言ったじゃん!」


「貴様は自分の立場が本当に分からぬ愚かなガキだ。そんな時間稼ぎのような真似しよって‥助かると思っているのか」


「思ってるよ!あんたみたいなクソッタレは真選組が捕まえる!ここに来る!」


「フンッ、あれだけ死んでいるのに誰が貴様を助けに来ると?」


「助けに来る!あんたが捕まったら、その鼻くそ引きちぎってやるから!絆創膏準備してろ!」


私の言葉にハンッと鼻で笑う間黒。それがたまらなくムカついて許せなくて。真選組はあんたらが思ってるよりずっと強いんだから、それにあいつらがいなくなったら、沖田が死んだら‥私は誰に怒りをぶつければいいの。誰と喧嘩して言い合いすればいいの。


「‥沖田は、真選組は絶対来る!私は信じる、私を助けずに死ぬなんて、そんなの許さない!何のための真選組よ、いたいけな女の子一人助けられない警察なんて‥私がぶっ潰すから!間黒と一緒に成敗してやるから!」


だから‥だからさ、


「沖田っ‥聞いてる!?あんた早く‥私、のこと助けに来なさ"チョメチョメチョメチョメKOH〜♪"


すると絶妙なタイミングで、私の懐に入っている携帯が鳴り始めた。


「「‥‥‥」」


やっ、やべェエェェエェ!携帯マナーモードにするの忘れてたァア!お通ちゃんんんん!


間黒も周りにいるおっとっ党の仲間たちも、オット星の大使たちもテレビのリポーターも皆ポカーンとした表情で私を見ている。


"ポリポリポリポリポリくらえぇー♪"


やっ、やめてぇええええ!せっかくの感動シーンが、真剣なシーンがァアア!


"偉そうに正義かざしーでかい面しーて町を歩くー♪"


しっ、しかも歌詞ィイイ!これじゃあ真選組のこと信じてるのかけなしてるのか分からねーじゃねーかァアア!やだやだ!「アンチ警察の歌とかピッタリじゃん」とかいう軽い気持ちで設定しただけなのに!違うから、沖田のこと信じてるから!


"チョメ公なんざクソくらえー♪"


ていうか電話かけてるの誰だァアア!いつまでかけてんだよ、諦めて!出れないから!そろそろ切れ、しつこいんだよ!あとで、あとでかけ直すからァ!


「うがぁ‥っ!」


するとそのとき、冷や汗が止まらない私の耳にバタッ、という倒れる音と呻き声が聞こえた。たちまち倉庫内がざわつき、バァアアアン!という爆発音も鳴り出す。え、え、何!?


状況が分からないまま、非常用ベルや刀のぶつかり合う音が耳に入ってくる。そしてウワアアァアア!と大勢がこちらへ近づいてくる声がして、何事かと体の自由が効かない私は必死に辺りを見回す。何かあったことはたしか。もしかしたら、と期待してしまう私は立ち込める黒煙の中を目を凝らす。


するとものすごい叫び声や血の臭いの中に、ゆっくりと近づく足音がひとつ。


「き、貴様は‥!」


驚いて目を見開く間黒の視線の先には、


「真選組一番隊隊長沖田総悟、参上でィ」


煤で頬が黒くなった沖田がバズーカを持って立っていた。


「お、沖田‥!」


沖田をこの目で見たときの驚きは、嬉しさは、鳥肌の立ち様は凄まじいものだった。柄にもなく涙が溢れてしまいそうで、でも沖田のために泣きたくなんかないのでぎゅっと唇を噛んだ。


沖田がはじめて、私を見る。たった数時間会っていなかっただけなのにとても久しぶりな感覚で、あの沖田に「あぁ、生きていて良かった」と思ってしまった。込み上げる嬉しさと安堵は予想以上で。沖田が目を細めて薄く笑ったので、私も笑ってやった。見たか間黒め、沖田はちゃんと助けに来てく‥「藤堂、帰ったら俺の着信音変えとけィ」


「はっ?」


沖田が、ポケットから携帯を出してみせた。


「さっきの電話お前だったんかい!」


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