言葉って難しい
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「アザラシ大使、アラザン大使、地球までご足労いただき誠にありがとうございます」


沖田&鼻くそ野郎にメラメラ怒りが募る中、オット星大使がターミナルに到着した。幕府のお偉いさんたちが次々と挨拶を交わしていく、そしてそのお偉いさんたちが彼らを私のところへ案内した。久しぶりに見るオット星人。見た目はオットセイそのままである、ただ大使ともあって私が知っているオット星人とは違って品やオーラがある。再びやって来た緊張を悟られぬよう、目の前の2人にニッコリ微笑んだ。よーし、頑張るぞ!


「℃*ゞ◎&※(ようこそ、地球へ)」


私がオット星語で挨拶すると彼らは一瞬ビックリしたような表情を浮かべたがすぐ、お辞儀をして挨拶を返してくれた。


「☆゜♯≒Δπ(通訳の藤堂マナです)」


「×∞%▽≫(アザラシです、よろしく)」


「>〃※♀±¨¢◎⌒∴(アラザンです、地球にオット星語を話せる人がいるとは思いませんでした)


久しぶりの生のオット星語はしっかり聞き取れた。しかも隣の鼻くそ野郎とは違って2人とも温和な口調だし、不安だったけどこれは‥いけるかもしれない。


「きみ、私の紹介を頼む」


「チッ」


「!」


せっかく良い気分だったのに、鼻くそ野郎がしゃしゃり出てきたので、思わず舌打ちをしてしまった。すると鼻くそ野郎が目を見開いたあと私をキッと睨んだ。やべー‥どうにかしないと。


「今のは舌打ちじゃなくてオット星語で"はい"という意味なんです。すいません区別がつかなくて(笑)


「‥っ」


鼻くそ野郎は気に食わぬ顔で私を見ている。どうせオット星がどんな星かも知らない野郎だ、言葉だって分からないだろうしこれくらい嘘ついたってバレないだろう。ということで今日限定で舌打ちを"はい"という意味にします!
私しかオット星語を話せる人間はいないんだし。ケッケッケッ、何か楽しいな。舌打ちしまくってやろう。


「※"○▲?%*∞^?□&(アザラシ大使、アラザン大使、日本語ではいというときはチッと言います。ぜひ使ってみてください)」


「「チッ」」


「‥‥‥」


私の説明通り、2人が早速舌打ちをしてくれた。さっきは自分が舌打ちしたから気にならなかったけど、されるとめっちゃムカつくなコレ。しかも話せるの私しかいないってことは、このあとの舌打ち全部私に降ってくるじゃねーか。


「/※¨〆◎‐∧&§λ(こちらは花苦嘘(ハナクソ)長官です)」


鼻くそ野郎の名前は知らない(というか名乗っていない)ので適当に命名かつ当て字にしてみました。自分しか分からないって楽しいィイ!見てよ鼻くそ野郎の表情。めっちゃ笑顔で2人に挨拶してるぅう、鼻くそって言われてることも知らずに握手しているぅう!


込み上げる笑いを必死に押さえて鼻くそ野郎の指示通りに通訳をしていく。会合のあとに観光として江戸の街を回ると告げると、2人とも喜んでいた。


「藤堂、」


ターミナルから車へと移動するため移動していると、沖田が後ろから話しかけてきた。鼻くそ野郎はかなり前を歩いているのでこちらには気づいていない。ていうか松平さんが見当たらない。どこ行ったんだろう?


「お前、アレ本当に通じてんのか」


「うっさい、話しかけないで」


沖田の目が胡散臭さ満点でこちらへ向いている。だが私も負けじと睨み返してやる。さっきのメス豚発言許したわけじゃないんだからな!


「何でィ、機嫌悪」


「誰のせいだと思ってんの?あんたいい加減にしてよね」


公共の場で、しかもお偉いさんがたくさんいるところでメス豚発言。言われた私の気持ちも考えてほしい。だが私の言葉に、は?みたいな表情でこちらを見る沖田。自覚ねーのかよ。


「今さらメス豚呼ばわりが嫌だってか?ンなモン初期設定からリセットしなくちゃいけなくなるだろーが」


「初期設定!?思いっきりあんたの上乗せ設定でしょーが!」


「いんや。藤堂マナメス豚18年目、弁当屋勤務。これがお前の設定でィ」


「リセットしたいんだけど!やり直したいんだけど!」


私のイライラに沖田は動じることがないまま、急に私の首根っこを叩いた。


「‥つったぁ!何すんのよ!」


叩かれた強さで一瞬、リアルによろめいた私を見て沖田は一言、虫とだけ言った。嘘つけよ!今までずっと私の隣で前見て歩いてたくせに、私の首(後ろあたり)が見えるわけないじゃん!それに今の、叩くっていうよりチョップだったよ!




「わぁ、」


ターミナルを出ると用意されていたリムジン。乗り込んだのはアラザン・アザラシ大使と私、そして鼻くそ野郎。相変わらず鼻くそ野郎と沖田はムカつくけどそんなことより私はリムジンに乗れたことが嬉しくてテンションが最高潮だった。リムジンって簡単に乗れるモンじゃないよね、座席はふわふわの毛皮みたいなの敷いてあるし高そうなお酒も置いてある。ソワソワ落ち着かないまま、私は車内をあちこち見渡していた。やべーよセレブじゃんこれ。弁当屋がリムジン乗っちゃったよ。


ていうか松平さん、どこ行ったんだろう?一緒に行動するとか言ってたのに‥さっきからいないし。まぁいない方が寿命は縮まらないけど。


「藤堂、」


車が発車する寸前、沖田が私が座る座席の方の窓をコンコン叩いた。がとくに何も言う様子はない、何だよ。とりあえず沖田にあっかんべーしてやった。


「向かえ」


そんな私たちを呆れるように横目で見ていた鼻くそ野郎は運転手に車を出すように言った。


「    」


リムジンが動き始めて沖田が見えなくなる寸前、妙に優しい表情の沖田が何を言ったか、私には聞こえなかった。


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