ゼロカロリーは信じるな >「は‥通訳ですか?」 私の質問に目の前の着ぐるみがコクンと頷いた。 「マナちゃん、着ぐるみって何?まさかラーゴリ?言っておくけど俺は着ぐるみじゃないから」 「ラーゴリって何ですか、何で逆にしたんですか」 お店に近藤さんから電話があったのは昨日のこと。頼みたいことがあるからと言われ、とりあえず話を聞くために私はファミレスにやって来た。近藤さんの他に沖田も一緒に来ていた。 「私ハンバーグセットとチョコレートパフェで」 近藤さんが奢ってくれるだろうと思い、一番ボリューミーで値段の高いハンバーグセットを頼む。給料前で財布の中すっからかんだったんだよね、ラッキー。 「お前ウ○コ色のモンしか頼んでねーじゃねーか、さすがウ○コ」 「さすがウ○コって何、ツッコミ雑じゃね?」 メロンソーダを飲みながら憎たらしい表情を浮かべる沖田がムカついたので、ポーカーフェイスでテーブルの下の沖田の足を蹴った。 「いだあっ!」 そしたら近藤さんの足だった、おっと失礼。 「‥話を戻すけど、マナちゃんに通訳の仕事を頼みたくてね」 涙目になる近藤さんに申し訳なくなって、苦笑いを浮かべた。それにしても通訳って何?何で私?イーオン行けよ。 「来週、オット星からお役人の方が来日するんだが、言葉を話せる者がいなくてな。マナちゃんに通訳をしてほしいんだ」 「オメー留学してたって言ってただろィ?」 ‥なるほど、近藤さんたちはオット星に留学経験のある私に通訳を頼みたいってことね。たしかにオット星は地球からずいぶん離れてるし、まだこっちにはあんまり浸透してないもんなぁ。通訳できる人も本当に限られてるんだろう。 「俺たちは幕府からお役人の護衛を頼まれているから、当日は一緒に行動できるよ」 ニッコリ微笑む近藤さん。ちょっと待ってよ、私まだ返事してないんだけど。しかも一緒に行動とか全く望んでないから。 「良いかな、マナちゃん」 「近藤さん、ウ○コ豚に断る権利なんてないでさァ」 少し困った表情で私に頼む近藤さんに大丈夫でィと頷く沖田。ウ○コ豚って何だ、ブランドかブランド肉かコノヤロー。 「沖田は黙ってて、ドリンクバー行ってこい」 「‥だそうでさァ、近藤さん」 「いやお前ェエ!」 近藤さんの肩をポンポン叩く沖田の足を今度こそ蹴った。だが沖田の表情は変わらない。うっぜ、果てしなくうっぜ。前回珍しく良いことしたからって調子乗んなハーゲ。 「ダメかな?お弁当屋さんもあるから大変なのは重々承知しているんだが、マナちゃんしかいないし幕府方もぜひ頼みたいって」 「っは!?幕府?そんな‥幕府まで?」 近藤さんの言葉に飲みかけた水を吹き出しそうになった。そんな、マジで断る選択肢ねぇじゃねーか!もう決定じゃね?周り固められてね?まぁ形式的に一応確認しとくか的な感じじゃね?私の語学力を勝手に使おうとしてるよね、いたいけな18歳のプリティーガールに幕府という名の圧力かかっ「さっさと頷けメス豚コノヤロー」 「んがっ!」 しびれを切らしたように沖田が私の足(脛)を蹴った。何で見てもいないのに痛いところ蹴れるんだよ、まじ痛いィイ!しかもお前、それが人にものを頼む態度か!? 「何すんのよ!」 「プリティーなんちゃらとか調子こいたこと言ってるからでィ。それにえた非人のお前にとっちゃ悪くねぇ話だろ」 「えた非人!?歴史の教科書みたいに言うな、芋侍沖田」 「あーあー良いのかねェ、じゃがいも(コロッケ)に携わる人間が芋を馬鹿にした発言して」 「まぁまぁ、二人とも落ち着いて!ね?」 火花がバチバチと混じり合う私たちを仲裁した近藤さんは私に報酬もそれなりにあるから、と話し始めた。おいコラゴリラ、お前まで私のことえた非人扱いか!何なの、あんたらヒロインに対しての態度見直せ! 「‥い、いくらなんですか」 「金で動こうとしてるお前こそヒロイン感0じゃねーかィ」 「だ、黙れ。今はアレ‥あの、0の時代だから。0カロリーコーラとかNEWS ZEROとか永遠の0とか‥ああいうのと同じだから、流行に乗ってるだけだから」 幕府からの頼み=報酬は期待する価値あり すでに私の頭の中でこんな式が出来上がっていて、でも沖田の言う通りに頷くわけにはいかないので必死にポーカーフェイスで貫き通す。幕府からの報酬って聞いただけでもうヤバくね?お弁当屋2号店とか出せちゃうんじゃね? 「報酬は真選組ソーセージ(プレミアムver.)だ」 「すいまっせェエん!ハンバーグの鉄板熱々で持ってきてくださァアい!」 「マナちゃん!!何恐ろしいこと叫んでるの!?何に使うのその鉄板ンン!」 「もう一枚追加でィ!」 「総悟ォオオ!?何便乗してんの!良いから、ここでS発揮しなくていいからァ!」 前へ 次へ back |