バイ菌と細菌って意味違うんだよ
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「ザキの知り合いか?」


「俺は知らないです、副長か隊長のファンとか?」


「あんな大声出す女知らねーな」


「俺もあんなメス豚はじめて見やした」


おいィイイイ、何言ってんだァア!つい1時間前くらいに会ってますけど。ていうかメス豚って言ってんじゃんよ。メス豚じゃないけどな!


「"はじめて見やした"じゃないでしょーが!あんたとぶつかった女!覚えてないとは言わせないから!」


私は食べかけのりんごを持ちながら男へと近づいていった。さっきりんごで少し落ち着いていたってのにこれじゃあ意味がない。


「あぁ、細菌メス豚女か。花瓶は片付けたか?」


男は近づいた私を見てやっと思い出したようだ。ていうか最悪なコンビをくっつけるな、何その呼び方。


「えぇ、えぇ。片付けましたとも!それより私はあんたにムカついてるの、分かる?」


「あぁ、そのぶっさいくなツラ見りゃーねィ」


「こら総悟!本当でも言っていいことと悪いことがあるぞ!」


「局長、それ自分に言ってください」


「‥総悟とアンタ、何かあったのか?」


私と男の間に入ってきた背の高いおにいさん。冷血そうなその人は煙草をくわえて私を見ている。え、ヤンキー?


「そ、そうです私が歩いてたらこの人とぶつかって服が濡れて花瓶が割れてメス豚とかバイ菌とか言ってきたんですそりゃあどうぶつの林やりすぎて寝不足だったからボーッとしてたかもしれないけどそんなに言うことないじゃないですか?なのにこの人一方的に私が悪いとか言って聞かないんですよ鼻が痛いなんて一瞬だったはずですそれで頭に来ていろいろ言ってたら勝手に消えたんですよあのあと私がどんな思いで花瓶を拾ったか!あームカついてきた」


「‥‥‥」


途中で呼吸を挟むことなく喋ったら息切れが半端ない。でもこのおにいさんには伝わったと思う。


ぽとっ、おにいさんの煙草の灰が床に落ちた。病室はシーンと静まり返っている。



「土方さん、こいつ絶対国語の成績1でさァ。文章力がゼロでィ。ついでに俺はバイ菌なんて言ってねぇ、細菌だ」


う、うぜェエ!とことんムカつく!細菌にしろバイ菌にしろ、汚いことには変わらないじゃないか。


「失礼ですが、」


男を睨みながら何を言い返そうと考えていると、後ろからお母さんの声が。さすがに娘がこんなに言われてたら黙ってられないよね、ママン!


「うちの子の国語の成績は1じゃなく2です」


「「「「‥‥‥‥」」」」


お母さんんんん!攻撃になってないよそれ、ていうか恥ずかしい!せめて3ならまだしも2だから!1と2の差なんて出席日数くらいだからァア!


「フッ」


完全アウェイな空気の中、吹き出したのはムカつくあのクソ男だった。


「ちょ、何笑ってんのよ!」


恥ずかしい。まだ会って数分の人にバカなのがバレるし味方だと思ってたお母さんもバカだし、1番笑ってほしくない人には笑われるし。


「豚の子は豚でさァ」


「ねぇ、それって豚じゃなくて蛙じゃない?」


「お母さん、もういいからりんご食べてて」


「山崎、バイ菌と細菌はどう違うんだ?」


「局長、お願いですからバナナ食べててください」


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