二度あることは三度ない
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「マナねぇちゃん!」


「あーおはよう佐吉」


寺子屋は夏休みに入ったらしく、佐吉たち三人組はおやつだけじゃなくお昼に来てくれることが多くなった。今日は開店してすぐ佐吉がやって来た。


「こんなに早くどうしたの、朝ご飯食べなかったの?」


「ううん、これ誘いに来たんだ」


カウンター越しに一枚のチラシを見せてきた佐吉。背伸びする佐吉から受け取るとそれは大江戸商店街夏祭りのチラシだった。


「俺スーパーボールすくいやりたいんだ!マナちゃんもいこうよ」


目を輝かせて私を見る佐吉。大きい黒目がスーパーボールに見え‥なくもない。スーパーボールって‥子供って本当そういうの好きだよなぁ。


「ごめんね、うちのお店も一応商店街の区域に入ってて出店出すから仕事なの」


来週開催される商店街のお祭り。お祭りと言っても大規模なお祭りではない、近くの公園で開く地味なお祭り。


商店街に店を出す人たちが出店を出して町の子供やその家族が遊びに来る一日限定のイベント。この間みたいに花火があるわけじゃないけど、ゲームとか小さいコーナーがあるらしい。
ちなみにあいうえお弁当はジュースとコロッケを中心にした出店を出すことになっている。あと夏らしくかき氷も。


「えーそうなんだ!じゃあお祭りの日買いにいくよ」


「ん、龍之介と一平と一緒においで」


チラシを返すと佐吉は大きく頷いた。ラジオ体操帰りで小腹が空いているという佐吉にコロッケをあげると喜んで帰って行った。ああいう無邪気なところ可愛いなぁ。


「マナさん、こんにちは」


それから15分後のこと、今度は金成木さんがやって来た。最近彼は私を下の名前で呼ぶ、気づいたらそう呼ばれていた。変に照れて否定するのもアレなので何も言わないけど。


「こんにちは」


私が挨拶をすると金成木さんもまた商店街祭りの話を出してきた。しかもまた誘われた、何だこの私の祭りシーズンのモテキは。子供から青年まで私を祭りに誘っちゃって〜困ちゃうなぁ。そのうちオッサンかおじいちゃんあたりにも誘われたりして。


「ごめんなさい、その日のお祭りウチのお店も出すんです」


「あ、そうだったんですか。お仕事なら仕方ないですね、すいません図々しくて」


あの日の祭りが楽しかったもんですからと頭をかきながら照れる金成木さん。楽しかったって‥そんな、私途中沖田に拉致られたのに?


「僕、祭りが好きなんでいろんな祭り行くんですよ。来週のも楽しみですね」


チョコバナナの屋台があるといいなぁと笑う金成木さん。平和だ、この人は常にラブアンドピースな世界で生きてる気がする。どこぞの皇子と重ねるわけじゃないけど、


「マナさんの屋台にも絶対、行きますね」


金成木さんはいつものように日替わり弁当をふたつ買って笑顔で帰っていった。ふたつ買っていくのは自分と爺やの分。ちなみに爺やというのは金成木さんの世話係らしい。そんな大人になって世話係がいるなんて甘やかされすぎだ!と内心思いつつも本当に爺やとかいうポジションの人がいるんだと聞いたときは驚いた。貧乏だから見たことないけど‥アレか、スーツ着て白髭蓄えて眼鏡かけてニッコリ的な?


「それカーネルサンダースじゃねーか」


「あ、本当だ。カーネルと同じアイテムだ‥‥ってわぁああ!」


爺やのイメージ像を描いていたらいつのまにか沖田がショーケースの前に立っていた。静かだった店内に私の叫びに近い声が響いた。いや何であんたはいつも不意に現れるんだよ。このパターン何度目?


「何でそんなに驚くんでィ。今日は普通に入ってきただろィ」


「いや何で自慢げ?ていうか今までの登場が犯罪級だからねあんたは」


沖田の不意な登場は何度目でも慣れない、そして心臓に悪いからできればもうやめてほしい。


「今日早いね、非番なの?」


「見てわかんねぇのか隊服着てんだろィ。あー豚だからわかんねぇか、ソーリーソーリー‥あー豚だから英語なんてわかんねぇか」


「‥‥‥」


普通に聞いただけなのに、攻撃半端ないんだけどォオ!確かに隊服着てるけどそこまで暴言並べなくてもいいじゃん、ていうか豚じゃねーよ。しかも暴言で来ると思わなかったから何も言い返せなかった、畜生‥!


「何?朝っぱらから喧嘩するつもりか、あぁん?」


「豚とコミュニケーションとるくらいならダンゴ虫に話しかけらァ」


「言ったな?今すぐ話しかけに行けよ写真撮ってやっからツイッターに載せて恥さらしキャラにしてやっから」


「やってみろィ、お前の顔面凶器(すっぴん)写真カラーコピーして商店街に貼って二度と商店街歩けなくしてやるぜィ」


「フンッ!そんな写真持ってないくせによく言うわ、ついでに言っておくと女のすっぴんを顔面凶器って言う男はモテないからな永遠に。現実受け止めろハーゲ」


気分は日本の女代表だった。すっぴんが全員SK-IIの綾瀬は○かだと思うなよ、世の中そんな甘くないわ。フンッ!


「写真ならあるぜィ、ほら」


勝ち誇る私の目の前に出された沖田の携帯には、


「‥い、いつ撮った!?不法侵入か!」


なんと私(綾瀬は○かではない方のすっぴん)の寝顔が映っていた。サァアっと寒気が走る。何で、ちょ‥まっ‥ハァアア!?


「お前の家に泊まったとき(37話参照)撮ったんでィ」


「(37話参照)じゃねぇよ!何やってんの気持ち悪い!」


「しかも聞いて驚けィ、大江戸商店街祭りのイベント"大江戸商店街の良いところ写真コンテスト"にエントリーしておいた」


沖田の懐から出てきた商店街祭りのチラシ。たしかにイベント欄にはコンテストの情報が書いてある‥って、


「な‥何してくれとんじゃぁあ!マジで商店街歩けなくなるじゃん!アホかお前ェエエ!」


しかも私の写真(綾瀬は○かではない方の‥以下略)が大江戸商店街の良いところなわけねーだろ!コンセプトと私のプライバシーを守れぇえ!


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