万引きは犯罪です
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「よォ、相変わらずシケた店だな」


「んなこと言っちゃって。ここが恋しくなったんでしょ?」


沖田は手伝いを辞めてからも週3〜4のペースでお店へやってくる。単価の安いコロッケしか買っていかないけど。


「のり子さんいねぇのか」


「最近忙しかったから、たまには早く休んでってさっき帰ってもらったの」


「ふーん、お前も人の心配できんだねィ」


コロッケを包む私を不思議そうに見つめる沖田。そんなに意外かコノヤロー。


「はい、コーンコロッケと牛肉コロッケ2つずつね、360円」


「セールやってねぇのか」


「やってるわけねぇだろ!360円に渋るな公務員」


「じゃあ社割」


「それもねぇよ!しかもあんた社員じゃないし」


面倒くさそうに百円玉4枚を出した沖田。最初から出せよと思いながらそれを受けとった。


「つーかその弁当、余ってんのか?」


沖田が急にレジ横に置いてある日替わり弁当を指差した。はっとして私もそれを見る。


「べ、別に?」


「‥‥お前分かりやすいな」


はぁ、とため息をこぼす沖田。どこがよ、と聞けば私をじっと見てからそういうとこ、と呟くように言った。


何よ、私のことわかったみたいな言い方しちゃってさ。


「おめーが食うのか」


「あんたに関係ないでしょ、コロッケ買ったんだし早く帰れハゲ」


しっしっと追い出すような素振りを見せれば、沖田はレジへ近づき、私が止める間もなく避けてあった弁当を奪った。


「あぁぁあ!ちょっと返してよ!」


これじゃあ金成木さんのメモのときと同じじゃん!やめて、この前みたいになるのは避けたいィイ!ユキちゃんの餌になるのだけは阻止しなきゃ!


「何で残してあんでさァ、」


Sの血が騒ぐかのように、ニタァと微笑む沖田。ムッキィイイイ!


「早く言わねぇとオンジの夕飯に回すぜ」


「オンジかよ!そこはユキちゃんじゃないの!」


「うるせーな、早く言えよ。3‥2‥「あー分かった、分かった!」


沖田がお弁当をぐるんぐるん回そうとしたので、私は降参した。返してくれるかは分からないけど中身がぐちゃぐちゃにされたくない!


「かっ、金成木さんが、日替わり弁当食べたいんだって」


「‥‥‥」


自分で言って恥ずかしくなってきた。これじゃ、沖田から見たら私が金成木さんのこと好きみたいじゃない。


「わざわざ来てくれたの、でもそのとき日替わり弁当が売り切れてて‥だから1個だけとっておいたの‥だっ、だから早く返してよ」


好きとかじゃない、お客さんとしてだよと都合のいい理由を心の中で言った。沖田は無表情のまま私にお弁当を返す様子はない。


「‥そういやァ、土方さんが徹夜で仕事して腹減らしてたな。これもらってくぞ」


「はっ?ちょ、聞いてたァア!?ていうか土方さんのこと死ねとか言ってるじゃん、何その優しさ!嘘だよね?無理矢理でしょ!」


カラン、


「待てェエエ!!」


沖田は叫ぶ私を無視してお店を出ていった。置いていかれた私はただショーケースの前で、立ち尽くす。


「‥‥‥」


冗談でィとか言ってまた戻ってくるかなという期待も見事に外れた、あいつゥウウ!


どこまで私の恋路‥じゃなくて、初のモテ期を潰す気なの?せっかくとっておいたのに‥!


「‥おもしろくねェ、」


お店の外、盗ってきたお弁当を見る沖田の独り言はもちろん聞こえない。


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