本気と書いてマジと読む
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沖田に金成木さんの連絡先が書かれたメモを取られたので、私は結局彼に連絡が取ることができなくなった。


下心とかそういうのはないけど、せっかくの貴重な存在が簡単に消えてしまうのは少し残念だ。(しかもそれが沖田のせいだと尚更)


「でもまぁ、仕方ないか‥」


私から連絡がなければ、金成木さんも諦めるだろうし。


勝手にそう結論付けた私はいつものように、揚げ立てのコロッケをショーケースに並べながら暇な店内で一人、店番をしていた。


カラン、


そんなとき、客の来店を知らせる音がした。


「いらっしゃ‥あ」


「こ、こんにちは」


来店したのは、金成木さんだった。な、何でこんなところに?え、えぇ!?


「真選組の山崎さんという方から、お弁当屋さんで働いていると教えていただいて‥」


金成木さんは私が聞く前に自分から答えてくれた。照れているのか声が小さく、頬がほんのり赤くなっている。


「そ、うなんですか」


そんな彼に私まで恥ずかしくなる。山崎さん口軽いな!別に言ってほしくなかったわけじゃないけど、それに‥言ったとしても金成木さんがここまで来るとは思わなかった。


「あの、すいません‥連絡できなくて」


"金成木さん=沖田にメモ取られた"
この式が私の頭のなかで繋がったので、謝らねばと思った。


「私こそ会ってすぐに、図々しいことをしてしまってすみませんでした。そして今日は会いに来ました」


「(‥それもなかなか図々しくね?)」


ニッコリ笑う金成木さんに私も笑い返した。上手く笑えたかは知らないけど。


「素敵なお弁当屋さんですね、藤堂さんエプロン姿も似合います」


「‥いやいや、そんな」


何でこの人は、こんな恥ずかしくなることをさらっと言えてしまうんだろう。私そんな免疫ないんですけどォオ!


「山崎さん情報によると日替わり弁当がオススメだと聞いたんですが」


ショーケースの日替わり弁当を見る‥ってねェエエエ!はっ、そうだ売り切れたんだったァア!


「(なんというバッドタイミング!)」


ていうか山崎さん一回しかこのお店来てないのに、常連面して何オススメしてんだよ!しかもあの時エビフライ弁当だったよ、あいつ!(29話参照)


"適当+口軽=山崎"


私のなかでもうひとつの式が出来上がる。くそー、もう余ってる弁当微妙なのばっかだよ。さすが余り物!
‥って違う!


「売り切れてるみたいですね、じゃあ代わりにコロッケを頂こうかな」


「あ、ありがとうございまーす(コロッケに"頂こうかな"なんて言葉使ったの金成木さんが初だよ)」


金成木さんは牛肉コロッケをふたつ買ってくれた。猫ちゃんにあげるらしい、優しい飼い主だなぁ。


「それと、」


コロッケを渡してお金を受けとると金成木さんが、また恥ずかしそうに口を開いた。何だろうと金成木さんを見る。


「来週の夏祭り、誰かと行かれる予定はありますか?」


江戸の大きな夏の催し、大江戸夏祭り。もうそんな時期か、忘れてたから行く予定すらなかった。


「あー‥まだですけど」


「じゃ、じゃあ!僕と行きませんか?」


ニッコリ笑った金成木さん、やべーよそのさわやかな笑顔。白い歯が似合ってるね、うん。


‥ていうか私夏祭り、誘われたの‥これ?本格的なデートじゃね?


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