予想外、それが人生
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「もし良かったら‥あの、僕とデートしてくれませんか?」


ここ最近(猫ちゃんの飼い主にデートのお誘いを受けてから)、私は上の空だった。


あの日‥戸惑う私に金成木さんは、自分の携帯番号を書いたメモを渡して来た。気が向いたらでいいから連絡して、と言って。


気が向いたらも何も、この状況がビックリなんです。今まで虫(とくに蚊と蝉)にしかモテない人生を送ってきた私にとって彼の出現は私の中でかなり大打撃なわけで。しかも出会うだけならまだしも一目惚れされてしまうなんて!ギャグ連載なのに、何この急な路線変更。しかも相手も沖田じゃないし。


「のり子さんって一目惚れされたことある?」


閉店後のお店で私はのり子さんに金成木さんのことを話した。のり子さんは私のことずっと昔から知ってるし、お母さんみたいな存在だから何かアドバイスをくれると思った。


「金成木さんってあんた‥江戸で有名な傘屋さんだよ、将軍様も御用達の傘屋だって。その息子があんたをねぇ‥その息子は視力が悪いのかい」


「眼鏡はしてなかったけど‥ってのり子さんそれどういうこと!?」


私が一目惚れされるなんて納得しないかもしれないけど、現実なんだよ。私も信じきれないけど!


「若いんだから色んな男と遊んで経験しな。泣いて泣いて泣きまくるほど勉強になるもんだよ」


「ちょっと何でそんな失恋前提なの、もっと甘酸っぱい恋がいいんだけど私。飲み物で言うとカルピスら辺」


「そんな理想ばっか並べてたらあっという間に青春なんて終わっちまうよ」


私がボーッとしている間に、閉店作業を終え帰り支度をしたのり子さんはもう帰るらしい。裏口の扉を開けながら、


「あんたを好いてくれる男なんて珍しいんだから、その気持ちがあるうちに貢いでもらうことだね」


と言って(どや顔)帰っていった。全然アドバイスになってない。





「‥‥‥」


居間のテーブルに置いたままの金成木さんの連絡先。冷蔵庫から出したお茶を片手にその紙を眺める。


きれいな字だなぁ、金持ちだからお稽古とか習い事とかいっぱいするんだろうなぁ。


「あの、お友だちからでもいいんで」


恥ずかしそうに微笑む金成木さんの表情を思い出す。あれ、マジな顔だったな。本当に私のこと‥


「いやいや、仮にそうだとしてもなぜ、why?」


「東方神起か」


「いや、このwhy?は恋愛系だから加藤ミリヤの方‥









ギャァフッゴォオゲェエエ!」


いきなり返事来たと思えば、沖田が居間の入り口に立っていた。不法侵入しすぎお前!同じの前にもあったよね!しかもそれ持ってんの私のアイスクリーム!冷凍庫から盗ったなァア!


「な、何してんのよこんなとこで!ていうか何で勝手に入って来てんの!どっから入った?合鍵?合鍵持ってんのか!」


東方神起とか加藤ミリヤ以前にお前にwhy?なんだけど!


「夏野菜カレーが食いてェ」


「‥は?何でそれを私に言うの」


「花嫁修行でさァ。弁当屋の娘なら料理くらいパパッと作れねぇと」


「余計なお世話なんだよ、私はいつでも嫁にくらい行けますぅ」


そんな私の言葉に沖田がメモをチラリと見て、それをパッと取った。そして私が返してと言う前に、グシャッと握りつぶした。


「あぁああ!ちょ‥何すんのよ!」


「いつでも嫁に行けんだろィ?じゃあこんなのいらねぇじゃねーか。これはウチで飼ってるユキちゃんのおやつに持って帰らァ」


そう言ってメモは沖田のポケットの中へ。ユキちゃんってヤギか。みんなが一度は飼いたくなるアルプスの少女ハイヂのヤギか!


「じゃーな、戸締まりしっかりしろよ」


「お前が言うなァア!」


沖田は何をしに来たのだろう、ていうか‥


「メモ返せェエ!ドS沖田ぁあ!」


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