さよならは笑顔で
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「‥‥‥」


「‥‥‥」


台風は一夜で通りすぎたようで、朝から雲ひとつない快晴だった。


「‥‥‥」


「‥‥‥」


私と沖田総悟、そして猫ちゃんは居間で朝食をとっていた。誰も喋らない、沖田総悟はまだ完全に目覚めていないのか、眠そうに納豆を混ぜている。


「‥‥‥」


「‥‥‥」


き、気まずい。何もなかった(はず)のに何で気にしてるの私!あるわけないじゃん、沖田総悟も変な意味で寝たわけじゃないし。床で寝ると痛いもんね、うん分かるよ。


「‥‥‥」


「‥‥‥」


でも無言は辛い、沖田総悟よ喋りたまえ。何でこういうときに限って無言?もう猫ちゃんでもいいよ、ジジ的なキャラでいこう!黒猫だしさ。


こういうときにはテレビをつけるべきなのだけれど、普段テレビを見ない私(11話参照)はリモコンがどこにあるか分からない、いっちょ前に薄型テレビだからボタン的なのが見当たらないし。


ひとりでもこんな静かな朝食食べたことないんだけど、全く味わかんないんだけど。


「そういや、お前も来るか?」


「‥どっ、どこに?」


それからすぐ。納豆をかけながら、やっと、やっと!沖田総悟が話してくれた。ウェルカムトーキングゥウ!


「ん?屯所」


「何で?」


すると沖田総悟が猫ちゃんを見た。あ、そういえば今日飼い主(仮)が来るんだっけ、朝から衝撃的なことがあったから忘れていたよルシファー。


「この猫ルシファーって名前なのか」


「ち、違う違う!ていうか心読まないでよ」


「一応世話してたんだろィ。もしかしたら報酬貰えるかもしんねーぞ、蔵持ちだし」


「まだ決まってないんでしょ、それに報酬なんて貰えないよ」


「今さら良い人キャラは無理があるんじゃねーかィ」


「うるさいな、私はそん「ズズズ‥」


納豆ご飯を掻き込む音で消された、行儀が悪いなまったく。


「‥42点の朝食ゴチ」


「しばくぞこら」


朝食を食べ終わった沖田総悟にイラつきながらも、精神的には目覚めのときよりも落ち着いていた。人の手作りに42点とか堂々と言えるやつを気にしていた時点でおかしいんだ。だって実際、沖田総悟はいつも通りだもの。気にしてないのさ、彼は!
だから私も気にしない!何かあったわけじゃないし。度が過ぎたスキンシップ事件、これにて完結!


「これお前にやらァ、」


朝食後、支度をして猫ちゃんと屯所に帰る沖田総悟は私に一枚の紙を渡した。何やらアルファベットと番号がいくつも書いてある。何これ?と沖田総悟を見た。


「今までの給料は、その口座に入れろ」


「はぁ!?手伝いじゃん、タダに決まってるでしょ」


最後の最後まで、ふざけたヤツだな。あんた人の指折ったんだよ?


「じゃーな、メス豚」


「‥メス豚言うな」


もう、沖田総悟が手伝いに来ることはない。そう思ったら猫ちゃんを抱いて出ていくその姿が、いつもの私ならうざったいはずの沖田総悟が何だか寂しく見えて。


「‥お、沖田!」


初めて呼んだその名前に本人が立ち止まり、体ごとくるりとこちらを向いた。名前で呼ばれることに驚いたのか、彼の目が不思議そうに私を見ている。


「あの、達者で‥な!」


「フッ、てめぇは武士か」


何で呼び止めたか自分でもよく分からなかったけど、一瞬微笑んだ沖田総悟を見たら、何だかほっとする自分がいた。


「(‥笑ったとこ、初めて見たかもしれない)」



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