台風よ、私も一緒に飛ばしてくれ
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ピピピピッ、ピピピピッ、


目覚まし時計の音がうるさく鳴り始めた。うるさいそれを止めようと目を閉じながら腕だけを布団から出した。慣れというのはすごいと思う。毎朝のこの行為に体が覚えているのか、枕元にあるであろうそれに私の腕は迷うことなく触れた。


ピピピピッ、ピピ‥


ただ、今日はいつもと違った。いつものように止めた目覚ましが何やら温かかったのだ。


え、温かい?誰か命でも吹き込んだのか、いやそれもうギャグとかそういうレベルの話じゃなくなるよなんて思いながら目を開けて、触れたままの温かい目覚まし時計を見た。


「‥‥‥」


赤い目覚まし時計に被さっている私の手‥の下にもうひとつ手があった、つまり目覚まし時計と私の手の間にもうひとつの手が重なっているのである。え、何これ朝からサンドイッチ状態?私の朝食はご飯派だバカヤロー。


「‥‥‥」


え、サンドイッチ?


「‥‥‥」


ていうか、この知らない手は何?


まだ覚めていない頭が、非日常な事態が起きていると叫んでいた。


「‥早く離せよ、手が重ェ」


「あ、ごめんごめん‥‥‥え、え‥









ゴゥンアグギャァアアァァッ‥ゲゴホッ!」


すぐ近くで聞こえたのは聞きなれた、でもこの状態で聞くはずのない声だった。その少し掠れた声に私は叫んだ、そしてむせた。


「ギィグフブァヤァイャァアァァアア!」


そして視界に映ったギャグ連載にあるまじき光景にまた叫んだ、今度はむせなかった。


「なっ、何で、こっ‥ここにいんの!」


私の布団には沖田さん家の総悟くんがスヤスヤ眠っていたのだ、もう一度言おう。私が眠っていた布団に沖田総悟が、当たり前のように一緒に寝ているのである。イコール私は沖田総悟と超至近距離、というか仲良く添い寝?していたのだ。


「うるせぇな、母ちゃん」


「母ちゃんじゃねぇよ!仮に母ちゃんだとしても自分の部屋で寝ろ、いくつだよお前!」


飛び上がった私をよそに沖田総悟はむにゃむにゃと口を動かして眠り続けている。え、ちょ‥何これ何でこんなことになってるの?


朝から心臓が苦しい、やべ死ぬ?これ死ぬ?いやいかんいかん!まず思い出せ、昨日のことを!


「‥‥‥」


昨日はたしかに沖田総悟は居間で寝た、私優しいからブランケットかけたもん、あれが最後‥だよね。


で、目覚めたら隣にいた。


「‥おかしい!絶対おかしいィイ!」


何!?何があった!いえ、何もないことを祈るけど!


「‥目玉焼きは‥ん、半熟な」


「寝言で朝ご飯リクエストすんな!」


眠る沖田総悟を目覚まし時計(角ら辺)で叩いた。お前何でそんな呑気なの、それで‥何で叩かれて無反応なの。実はMか貴様。


とっ、とりあえず状況を確認しよう。
まず服は二人とも着ている(乱れた感じもナイ)、布団にも変なところはナイ。


「‥そう、この男がいること以外はおかしいことはないんだよ‥」


「藤堂、お前何か変な期待してんのかィ」


うっすらと沖田総悟の目が開く。そして体を起こし首をゴリゴリ回しながら彼はそう言った。やっと起きたな。あ、ちなみにこの"起きたな"は"沖田な"じゃないですよ、えぇ。


「死、してるわけないじゃん!もっかい時計で殴るぞ」


「死って何でィ」


逆に何でオメーはそんな冷静なんだよォオ!私はこう見えても汚れのないピュアな乙女なんだよ!しかもここでいきなり名前で呼ぶなよ、普通ならメス豚じゃないのかコルァ!


「あんな硬い床で寝たら体痛くなんだろィ、お前だけ藁の上で寝やがって」


「布団な。藁ってここ豚小屋じゃないから」


「いびきはブヒブヒしてなかったぞ、次までに練習しとけィ」


「次なんかねーよ!」


ダメだ、何かあったわけじゃないっぽいけどこれは私の中で嫌なものが残る。いくら沖田総悟でも一応男だし、もっと警戒しなくちゃいけなかったんだ。でもそんなの沖田総悟を男として見てるみたいで気持ち悪いし。いやでもこの状況はマズイよ、色々と。


「あーもう分からん!」


「話は朝飯食いながら聞いてやらァ、ウインナーはボイルじゃなくて炒めろィ」


「朝ご飯のリクエストいらないってば!しかもさっきから目玉焼きとかウインナーとか言ってるけどウチは和食だから!」


私とは裏腹にいつもの調子の沖田総悟は布団から出てトイレへと向かうのであった。


「何これ、地球の18歳はこれが普通なの?こんな時代なの?」


‥誰か、あの誰でもいいんで、ドッキリ大成功って書いてある‥アレ銀さんの使い回しでいいんで、持ってきてください。


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