お酒は20歳になってからだよ、マジで
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「うめーなァ」


「‥‥‥」


「ミャー」


台風が上陸しゴォゴォと強い風と雨が音を立て窓ガラスがガタガタ揺れる、午後10時。


お風呂上がりの沖田総悟はまともに髪も乾かさず、ひとり酒をたしなんでいた。
いや何?たしなむって。言ってみたけど意味は知らない。つーかお前未成年&警察。


「世の中な、こんなもんでィ」


「どんなモンだ」


「医者だって病気になるし、モーニン○娘。だってモーニング言っときながら寝坊するみてぇに警察だって酒くらい飲むわィ」


「そういう意味のモーニングじゃなくね?ていうか例えおかしいよ。しかも"わィ"って口調それ無理あるわ」


「おかしい顔面が言うな」


心なしかいつもよりとろーんとふざけた目をしている沖田総悟。酔っているかは知らないけど、相変わらず口の悪さは健在である。


「おめーも飲め、」


「覚えときな。私はオレンジジュースが好物だ!そんな苦いだけの液体は飲まない」


「だとよ、ケツも顔も青臭いガキだな」


「ミャー」


誰に話しかけてるんだと思って見れば、沖田総悟はテーブルの下に寝転がっている猫ちゃんに話しかけていた、ていうか猫ちゃんにお酒あげてるんだけどこの人!何やってんだよ!


「金持ちの猫に何しとんじゃァア!」


「まだ決まってねぇだろ、そんなにお別れしてぇのか」


慌てて猫ちゃんを抱き上げ、沖田総悟から離れさせた。ったく本当にこの男がいるとホンット油断ができない。


「そういやァ、お前オットセイで何学んだんでィ体型の他に」


「話戻りすぎじゃね?ていうか別に体型なんか学んでねーよ」


沖田総悟は私の留学話に興味があるらしい。
むくっと立ち上がり、少しよろめいた足で棚から教科書を一冊抜いた。
おーいフラフラしてんぞー。頼むからお皿割ったりとかしないでよ、柱に小指ぶつけたりするのは大歓迎だけどな!


「一文字も読めねぇや、何て書いてあるんでブスか?」


「それ敬語のつもりか、ブスって丸見えだぞ」


「甘ぇな、ブスじゃねぇ。でブスでィ」


「外出ろ雷に撃たれて死ね」


いっそのことアル中でもいい、これ以上は私のイライラが持たない。あと何時間一緒にいればいいの?本当はこんなやつ放っておいて一人で台風の夜を楽しみたい、真っ暗闇で台風の音を聞きながら眠りにつけたら最高なのに!


「カトケンサンバァア〜」


物だけではなく人の心をも壊す破壊マスィーン沖田がここにいる限り無理だ。選曲もイマイチだし、マイクにしてんのそれとうもろこしだから。どっから持ってきたんだよとうもろこし。


「カントリィロォオド〜この道ィイ」


「マルマルモリモリみんな食べるよぉー」


そのあとも沖田総悟は右手にとうもろこし、左手に私が留学時代に使っていた教科書(なぜ?)を持ってジャンルがバラバラの歌を歌い続けた。ジャイアン並みの破壊力はないけれど、イライラは天下一だ。偏頭痛がする。


「ねぇ、この猫ちゃん明日連れていくの?」


しばらく歌い続けた沖田総悟は満足したのか、また居間で静かにお酒を飲み始めた。めっちゃ飲んでるけど大丈夫かこいつ。


「あぁ、飼い主が明日屯所に確認しに来るんでィ」


「ふーん、」


私に撫でられ気持ち良さそうにゴロゴロ鳴いている猫ちゃん。かわいいなぁ、ここ数日で猫飼いたい願望がぐんと上がった。一人暮らし寂しいし猫くらいなら私でも飼えそうな気がするんだ。


「ふわぁ‥」


それからまたしばらくして沖田総悟がだいぶ大人しくなり、猫ちゃんが眠った頃、私にも睡魔がやって来た。時間は午前1時。


「ねぇ、私もう寝ていい?」


「‥‥‥」


よく見れば沖田総悟はもう寝ていた。コップ持ったまま器用に寝てるなーなんて感心しながらコップを取り上げ、一応ブランケットを肩にかけてやった。


「おやすみー」


そして静かになった居間の電気を消して、私は寝室へ入って行った。
結局そのまますぐに寝てしまった私は、せっかくの台風を全く楽しめなかった。


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