素直になろうよサタデーナイト
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「旨いか、もっと食べな、ほら」


猫を家へ連れて帰った次の日、猫は目を覚ましてしかも私があげた餌をたくさん食べてくれた。やっぱりお腹空いてたんだ、小さな体にどんどん入っていくそれはすぐになくなった。


「持ってくるから待っててね、」


猫の頭をポンポン撫でると目を細めてミャーと小さく鳴く猫ちゃん。
か、かわいい!めっちゃかわいいィイ!


ルンルン気分で立ち上がり、台所へ行こうとくるっと後ろを向くと、


「‥ぎィャァァアア!」


目の前に沖田総悟が立っていた。why!?今日お店休みじゃん、何でいるの!?不法侵入だろォオ!


「金剛力士像もビックリな顔してんじゃねーや」


「当たり前のようにあんたがいたらそうなるわ!どっから入った!あぁ?」


「石でポーンってやったらパリーンってなった」


「その適当な喋り方ローラか。ていうか窓割ったんかァア!?」


「ボロ屋はこれだから、」


「お前が言うなよ!修理代払え」


やれやれみたいな表情するな!警官が器物損害&不法侵入?誰かこいつに手錠を!


「お前、真選組ソーセージ猫の餌にしてんのか」


沖田総悟はしゃがみこんで、食事中の猫から餌をひとつ掴んだ。当たり前でしょ、1年分もあるんだから、早く消耗したいんだよ。


「悪い?無駄に多いから仕方ないでしょ‥って」


そう言う私をよそに自分が持っていた袋から真選組ソーセージを出す沖田総悟。


「お前も真選組ソーセージ持ってきたんかい!」


何これソーセージオンパレードじゃん、猫ちゃん飽きるんじゃね?


「あんた、これ渡しにここに来たの?」


もしかして猫好き?と聞くと沖田総悟は別に、と顔を逸らした。はい猫好き確定ー。


「パトロールの帰り道に来ただけでィ」


「‥パトロールの帰り道に人ん家の窓割る警官がどこにいるのよ」


もう新しく真選組ソーセージを持ってくる必要はなくなったので沖田総悟の隣に腰かける。そんな私をチラリと見つつ、猫ちゃんは餌を食べ続けている。


「お前、この猫どうすんでィ飼うのか」


沖田総悟が猫ちゃんの頭を撫でながら聞いてきた。その優しい触り方がとても新鮮で、猫ちゃんを見るその目も何だか優しくて。


「お前も早く乾かせ」


それが昨日の沖田総悟と重なった。急に見えたその表情、これが私の知らない沖田総悟なのか。


「聞いてんのか」


でも、ボーッとしていた私の頭をパシッと叩く沖田総悟はやっぱりいつもの沖田総悟で。


「(コロコロ変えるなバカヤロー)」


そんな沖田総悟に私は着いていけなかった。どっちが本当の沖田総悟なんだろうと考えてみたけれどやっぱり分からなくて。二重人格かな?くらいしか浮かばない、


「いっぱい食ってこの女より肥えろィ」


新しい真選組ソ‥以下略を剥いて食べやすいようにちぎる彼は心なしか楽しそうだ。


「‥‥‥」


少なくとも、沖田総悟と出会ってこんな表情を見るのは初めてだった。こんな部分があることすら知らなかった、


「よく食うなァ、こいつ」


土方さんが言っていたように他の角度から見たわけではないけれど、こういう部分を見てしまったので憎たらしいだけではない‥かもしれない。


「あのさ、」


ふと‥今なら言えると思った。いつもと違う優しい目をする沖田総悟になら、昨日はびっくりして言えなかったことを。


「あ?」


自分も真選‥以下略を食べ始めた沖田総悟がこちらを見た。目が合って彼を呼んだことを後悔した、めちゃくちゃ緊張するんだけどォオ!
え、何これ恥ずかしい!


「あの、昨日‥」


「昨日がどうした」


「いや‥あの、」


たった一言がなかなか言えなくて、どんどん言いにくい空気ができていく。何で言えないの、こんな一言をこいつに言うとは思ってなかったから?


「だから何でィ、昨日コロッケ盗み食いしたことまだ怒って「あああありがとう!」


やっと言えたその一言が部屋に響き渡る。沖田総悟は私の方を見て目をパチクリさせている。


「(言えた、こいつにありがとうって)」


言えたことにホッとする反面、言ったあとの気恥ずかしさもあって私は下を向いて畳だけを見た。猫ちゃんが餌を食べる音だけがやたら響いて、こんな空気になるなら言うんじゃなかったと少し後悔したけれど、


「‥何のことでィ、」


驚いてるわけでも、調子に乗るわけでもないその声に私が顔を上げると沖田総悟はむしゃむしゃ真‥以下略を食べ続けていて。


「何でもない!わ、私も食べよー」


一瞬だけ見たその横顔は、今まで見た彼の表情の中で一番優しそうだった。


うまく言葉にできないけど、何だか胸の奥がすごくあたたかくなった。


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