IQサプリって番組あったよね
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"アンタは総悟の全部を知ってるわけじゃねェだろ。復讐なんざする前にヤツを他の角度から見てみろ、少なくとも憎たらしいだけのヤツじゃねぇぞ?"


土方さん(他約20名の隊士)と会ってから数日、私の心はモヤモヤしていた。理由は沖田総悟、そして冒頭でも出てきている土方さんの言葉。


復讐しか頭になかった私の中に入ってきたそれに、ここ数日悩まされている私は伊東家のあの人の頭にモヤッとボールを落っことしたい気分なのである。


しかもこんな時に限って沖田総悟は手伝いに来ていない。というか私の不自由もなくなってきたので段々とここへ来る回数を減らしているらしく今週はまだ会っていない。


‥‥やだ、これじゃあ沖田総悟に会いたいみたいじゃん。違うよ、断じて違います。





「何ボーッとしてんでィ」


今日も来ないっぽいので、一人で開店準備をしていると聞きなれた声がした。はっとして顔を上げるとそこには腕を組んで壁にもたれた沖田総悟がいるではないか。


「あ、何で‥え」


「言いたいことまとめてから口開け」


今日のシフトいなかったじゃん、と言おうとしたのに驚きすぎて上手く喋れなかった。


「今日は将軍の護衛があんでィ。めんどくせーよなァ」


「いや行けよ将軍の護衛!弁当売るより将軍様の命守れよ」


相変わらず仕事を何だと思ってるんだこいつは。エプロン巻いてる場合か。


「俺は遅番なんでィ」


「護衛にシフトあんの?大丈夫なのそれ」


だから3時まではここで暇潰しでさァと言う沖田総悟に若干イラッとするも、すぐに土方さんの言葉を思い出した。


"少なくとも憎たらしいだけのヤツじゃねぇぞ?"


そうだ、沖田総悟の憎たらしい以外の部分を見たいんだよ私は。でもどうやって見つければ良いんだろう、いろいろ聞いてみる?


「あのさ、趣味って何?」


お店は昼時まで基本、暇なのでその時間を利用して私は沖田総悟を知ろうと質問をすることにした。


「女子プロレス観戦」


最初は怪しい目で見られたけど、意外にもちゃんと答えてくれて私の中の沖田総悟情報ボックスにはどんどん情報が入っていく。


「そんなに俺のこと聞いてどうすんでィ」


「いや!?べ、別に何も。聞いちゃ悪いわけ?」


「‥豚の動揺ほど醜いモンはねぇや」


「うっさい!誰が豚じゃ!」


会えば豚、話せば豚、豚に恨みでもあるのか。


「そういやお前、この間土方さんたちと集まったらしいな」


急に沖田総悟が思い出したように聞いてきた。間違いなくこの間のアレのことを言ってる。何で知ってるの?誰か言ったか、山崎さんとか。


「何話してたんでィ、昼間から隊士かき集めて。お前ウチの隊士とそんな仲良かったけか?」


「‥‥‥」


言えない、きみの復讐企んでました!なんて絶対言えないィイイ!しかもアレは復讐とか意気込んでただけで実際は被害者の会だったし、最終的に土方さんの言葉が気になって復讐する気起きなかったし‥


カラン、


どう言い逃れしようか焦っていると来客を知らせるお店のベルが鳴った。
っしゃ、助かったァア!って‥え?


「あ、隊長今日いたんですか」


「何でィ山崎か」


山崎かよォオオオ!何で今?もっと他に来る時間あるでしょうが!遅番か、あんたも遅番か?それにしちゃお昼食べるの早いだろまだ11時だぞ!


「マナちゃん、こんにちは」


「まだおはようございますの時間ですけど」


ニッコリ私に微笑む山崎さんに心の中で帰れコール連呼。この状況でこの間のことを話されたらまずい、それに山崎さんイマイチ信じれないから喋りそう。


「隊長、護衛は遅番ですか?」


「あぁ、だから朝からボランティア」


山崎さんは沖田総悟と喋りながらショーケースの弁当を見ている。お弁当買うのか、いやここに来たならそうだよね。


落ち着け私、ここは冷静に対処して山崎さんが帰ってくれるのを待とう。


「俺は今日からこの近くで張り込みなんで寄ってみたんですけど、美味しそうだなぁ」


「山崎さんは護衛じゃないんですか」


「うん、俺は監察だからね」


そう言ってから山崎さんはエビフライ弁当を注文した。それを聞いた沖田総悟がショーケースから弁当を出して袋に詰める。私は会計を済ませて沖田総悟から渡されたお弁当を山崎さんに手渡した。


「へぇー息ピッタリですね二人とも」


「「ぶっ殺すぞ」」


言葉通り息ピッタリな返しに山崎さんは苦笑い。何だその目は!


居心地が悪くなったのか山崎さんはお店を出ようと出入り口へ向かったのだけれど、ドアを開ける寸前でこちらを振り返って一言。


「マナちゃん、頑張ってね」


「‥‥は?」


私はその言葉に驚いたまま何も返せなくて。山崎さんが出ていった静かな店内にベルの音だけが響いた。


「‥‥‥」


山崎さんはこの間のこと‥を言っているのか?何を頑張るんだ、沖田総悟への復讐?良いところ探し?


「おめーらデキてんのかィ」


「はいっ!?」


そこへしばらく無言だった沖田総悟があり得ない言葉を発した。何でそうなるの、しかもよりによって山崎さんとか。


「マナちゃんだの、頑張ってねだの」


吐き気がすらァ、と口をおさえる沖田総悟。


「違うから、向こうが勝手に呼んでるだけだから」


「地味と豚の恋なんざ連載打ちきりだぞ」


「だから違うって言ってんでしょーが!」


土方さん、やっぱりこの人は憎たらしいです。


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