だってそんなキャラじゃない
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「そういえば、よく来る真選組の男の子、藤堂さんの彼氏さん?」


「‥ブォゴホッ!」


意識を戻した翌日、久しぶりの食事(病院食)を食べていると看護婦さんがやって来て、点滴を変えながら楽しそうにそう聞いてきた。


「やだぁー当たり?」


「違いますよ、げほっ‥何言ってんですか」


吐き出しそうになる私を見てケラケラ笑う看護婦さん、何でそうなるんだ。お願いだからどんなことよりも勘違いしてほしくない、ヤツと付き合ってるだなんて。


「あらそうなの、ナースの間ですごく話題なのよ?素敵なカップルだって、」


「やめてください絶対ないです」


なぜか残念がる看護婦を横目にご飯を掻きこむ。何でチェッ、みたいな顔してんだこの看護婦。


「でもあの子すごく心配してたのよ、知ってる?」


「え?」


ヤツが私を"心配"するなんて想像がつかない。ありえないと思いながらもご飯を食べる手は止まっていた。


「いつもあなたの様子見に来てたわ」


「え?」


看護婦さんが思い出すように、そうねぇ‥毎日かってくらいかしら?と信じられないことを言うので私は開いた口が塞がらなかった。


ま、毎日だと?いやないでしょ。どうせサボりたくて来てただけでしょ。


「あなたが意識戻ったときも、あの子病室にいたじゃない」


「‥あ」


信じられない私に付け加えるように微笑む看護婦さん。確かにそうだ。昨日、回想してたのに割り込んできたのはヤツである。


いやでも‥あいつだよ?沖田総悟だよ、私を心配って、逆に気持ち悪いと思うんだけど。似合わなさすぎて、


「毎日楽しそうにしてたわよ」


「‥え?」


点滴を変え終わった看護婦さんがまた微笑む。何で楽しいの?


「おでこに肉って書いたり、鼻にニンニク詰め込んだり、出っ歯の入れ歯嵌めてたりしてたわ」


「‥‥‥」


オィイイイ!それ私、ただ遊ばれてんじゃねーかァア!毎日来るってそれが目的だよね、心配じゃないよね絶対!
意識ない怪我人に何してんの、鼻にニンニク?よく呼吸止まらなかったな自分。


「すごくおもしろくて、ほら」


私も撮っちゃった、と携帯を取り出して私へ見せた看護婦さん。画面には私が起きている‥んじゃなくて眠ってるのに目蓋に目玉を書かれてアホ面の私が映っていた。ほっぺにナルトまで張り付けてあるんだけど。ていうか看護婦さんも何してんの、仕事は?


「素敵なボーイフレンドね」


「あれを素敵だと思ってるんだったらあんたクレイジーだよ。それとさっきも言ったけど彼氏じゃないですから」


何なのあんたたち、グル?そんな真っ白なナース服着てるのに腹真っ黒すぎるんですけど。


「あら、もういらないの?ちゃんと食べなくちゃダメよ」


すっかり食欲もなくなって箸を置いたままの私を心配したのか看護婦さんが、食べるよう促す。


「いや、もうお腹いっぱいなんでいいです」


いっぱいだ、いろいろと。そんな私を見て看護婦さんはまだ何か言いたげだったけれど黙ってお皿を下げてくれた。





「マジ許さん!これ消えないんだけど!」


そのあと鏡を見て、うっすらおでこに肉の字があったり、心なしか少しデカくなった鼻の穴を見てヤツの復讐を決意にした。本当なんなんだあいつ、イタズラとかそういう可愛いレベルじゃないよねこれ。私何か悪いことしたっけ?


「マナ!」


それからしばらくティッシュ片手におでこの"肉"を消そうと奮闘していると病室にお母さんがやって来た。あ、そっかお母さんも入院してること忘れてた。がらがらと点滴を引きながら元気そうに手をあげるお母さん。


「あんたヒーロー気取りして怪我したんだって?」


「何そのでしゃばりみたいな言い方」


登場早々、娘にそんなこと言う?と若干傷つきながらも言い方によってはそう聞こえるのかもしれないなと思ったらさらに悲しくなった。


「総悟くんが言ってたわよ、自分から犯人の攻撃を受けたんでさァって」


「またあいつか!ちょ、今あいつの話しないで。口調まで真似しないでくれる?」


あいつお母さんにまで適当なこと言って。どんだけ周りを黒く染めてくんだよ、


「でもすごいじゃない、感謝状もらうんでしょ?」


「え?」


お母さんは鼻が高いわぁーなんてひとり盛り上がっている。え、感謝状?何が?は?


「どういうこと?」


状況に着いていけない私は喜ぶお母さんの腕を引っ張って、とりあえず静かにさせた。


「なんかあんたの勇敢(でしゃばり)な行動が佐吉くんたちの命を救って事件解決に繋がったって、警察のお偉いさんが感心されたそうよ(笑)」


「( )の中めちゃムカつくんだけど、母親ならもっと娘のこと認めろよ」


お母さんに若干イラつきながらも、感謝状をもらえることにテンションは一気に上がっていた。
驚いたな。私の行動が、命を救った‥か。


そう言われると、何かすごく照れ臭い。でもそうやって認めてくれるのは嬉しいことだ。あれだけ殴られて蹴られて斬られたこの怪我も、意味があったんだって、そう思える。


「退院したら賞状と記念品もらえるんだって!楽しみね」


まるで自分のことのように、私よりはるかに楽しそうにお母さんは鼻唄(AIBOのテーマソング)を唄いながら病室を出ていった。


「‥え、もう帰るの?」


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