おはようございます
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ずっと暗闇をさ迷っていた。
誰も、何もない辺り一面真っ黒い道を、果てしなく歩き続けた。


壁も天井もないこの道は狭いのか広いのか、長いのか短いのか、そもそも私がいま歩いているのは道なのか。それすらもわからないまま、音も風も光もない闇のなかを私はただずっと歩き続け「さっさと起きろィ」


「っ‥‥」


頭に何かが当たった。その当たった感触と久々に聞く声に、自然と瞼がゆっくり開く。


ぼんやりと映る白い一面に映える黒と蜂蜜色。あぁ、これ何だっけ?なんて思い出しているうちに視界はどんどん鮮明になって、


「やっと起きたなブサイク」


沖田総悟の憎たらしい顔がハッキリとこの目に映った。黒い隊服に身を包んだヤツ‥目覚めた瞬間会いたくない人ランキング首位のこいつが何で私の目覚めのシーンにいるんだろう。ていうか、


「まだ回想してたじゃん私」


私まだ暗闇にいたんですけど。勝手に回想の中入ってきて無理矢理目覚めさせるとは‥デリカシーのデの字もないなこいつ。


「感動の目覚めのシーンが台無しなんだけど」


「起きたら白馬に乗った王子さまが微笑んで待ってるとでも思ったかィ」


「‥いやそれは思ってないよ。何その無駄な乙女思想、ロマンチストか」


目覚めに沖田総悟がいる時点で私の感動お目覚めシーンは台無しだけど。


「医者呼んでくらァ、大人しくしてろよ」


「は?ちょ、もう行くの?」


私、目覚めたばっかりなんだよ?何か話してくれてもいいじゃん。
病室を出ていこうとする沖田総悟を引き留めようと上半身を起こそうと力を入れると、


「んがァアア!」


お腹に激痛が走った、痛い何これ!


「おいおい、大人しくしてろよって言ったばっかりじゃねーかィ。何してんだ」


私の悲鳴に近い声に沖田総悟がこちらへ振り返る、呆れ顔だったヤツは私の痛がる姿を見てニタニタと口角を上げた。最低だ、人間として最低の部類だこいつ。


「ちょ、痛い‥助けて」


「大袈裟なんでィ、肋骨骨折、頭は4針縫って足は切断くらいで」


「‥えぇっ!?」


頭が真っ白になる、そんな重傷だったの私?ていうか切断んんんん!?


怖くなって自分の足をバタバタ動かす。どっちが斬られたとか覚えてなかったからとりあえず両方動かすと、右足が痛いと感じた。まさかと思い、布団をめくると両足とも切断はされてない。右足に包帯がグルグル巻かれているだけ。


「フッ、騙された」


「‥ちょ!あんた言っていい冗談と悪い冗談があるでしょーが!マジビビったからね今!」


切断されてなくて良かったと、ベッドに倒れ込む私。あのとき、犯人に足を斬られたんだっけ‥やっとここで事件のことを思い出した、あのあと私、


「ガキ庇ったあと斬られてぽっくり倒れて、あの事件からお前今まで意識なかったんでィ」


「‥‥え、嘘」


「嘘じゃねぇ、もう1週間でぃ」


そんな時間、意識なかったの私?え、1週間も!?


そのあと、色々と混乱する中、沖田総悟に事件のことを全部話してもらった。
過激派攘夷集団、ポカリスエッ党はあの山で売人と違法薬物の売買をしていて三人が見つけた埋蔵金(小判)は盗んだもので薬物と交換するつもりだったらしい。犯人は数人死んだものの全員逮捕し、あの三人も無事救出された。
良かった‥三人の無事が一番安心する。本当良かった‥


「‥ううっ、よかった‥ぁ」


沖田総悟の話を聞くと、あの三人はしっかり反省して今は元気に生活しているという。私が意識を戻さない間も様子を見に来てくれていたらしい。それを聞いたら何だかすごく安心して、自然と涙がこぼれた。あの三人に会いたい、


「泣くな、それ以上ブサイクになったらお前、外出禁止令出すぞ」


「うっさい!つーか何!?外出禁止令?」


とことん空気読めない男だ、大丈夫か?って心配したり黙ってハンカチ差し出す優しさとか‥ないか。こちとらどれだけ怖くて痛い思いしたと思ってるんだよ。そう思ったらまた涙が溢れてしまう。


「お前‥この小説はお涙頂戴連載じゃねぇんだぞ、アホでブッサイクな主人公がコロッケ揚げる連載でィ」


「違うわァア!ちょ‥もういいから、あんたどっか行ってよ。医者、お医者さん呼んできて」


泣き顔を見られたくないし、これ以上ブサイクって言われたら傷口が開きそうだ。私は沖田総悟の背中を押して部屋から追い出した。


おめーが引き留めたんだろィ、と言いながらもやっと少し空気が読めたらしい、ヤツは静かに病室を出ていった。




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