これできっとおしまい
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龍之介と一平が連れていかれてすぐ、外からざわめきが聞こえた。犯人である男の怒鳴り声と二人の泣き声も聞こえる、


あれか‥ドラマとか映画とかで見る犯人vs警察の交渉か、AIBOで観たことあるぞ。


「マナねぇちゃん、大丈夫だよね‥っ?」


「あんた何泣いてんの、男ならマナねぇちゃん守るくらい言いなさい!」


私だって泣きたいんだよ!とは言わなかったけど、怖くて仕方なかった。お腹と頭の怪我で体中痛むし呼吸も荒い、精神的にも体力的にもそろそろ限界だと感じていた。


「おら、お前らも行くぞ」


それからすぐ、さっきまでの男とは違う声の男がやって来て私と佐吉を立たせた。え、単独犯じゃなかったっけ?


「おい、こいつら外に出せ」


「はい!でもそのガキが小判まだ持ってるらしいっす」


「あぁん?めんどくせーな、」


目隠しされている中繰り広げられる会話。ていうかいつのまに仲間増えた!?さっきまで一人しかいなかったのに!めっちゃザワザワしてるんだけど、これ集団!?


男たちは抵抗する佐吉から小判を奪ったようで、今度こそ私たちは移動させられた。


ギィ、と扉の開く音がしてすぐに夜風を感じた。周りからどよめきが起きる、あぁ外に出たんだと分かった。


室内とは違い、空気が澄んでいて涼しい。相変わらず囚われてはいるけど気分的には自由になったみたい。


「ハハハ!人質はこの四人だ、こいつらを解放してほしくば、仲間の保釈と逃走資金1億が交換条件だ」


「いっ、いちおく!?あんたバカじゃないの?」


1億なんて用意してる間に私死にそうなんですけど!驚いてその場で叫んだ私の頭にパンチが飛んできた、いやだからもう殴るなァア!


「この四人の中にはお前ら警察の関係者もいるんだ、お披露目してやる」


そう言って、私は目隠しをはずされた。私は警察関係者じゃないけどね。
飛び込んできた眩しい光は巨大なライト。警察がこちらを見やすくするために設置したものだろう、眩しすぎて周りがよく見えないけど。


「‥っ」


だんだんと慣れた久々の視界に映ったいくつものパトカーと大量の警察官、のり子さんや三人の親も遠くに見える。辺りは山に囲まれていて、後ろを振り返り確認すると、今まで自分が捕まっていたのは山小屋のような古い建物だった。


そして、


「‥あ」


警察(よく見たら全員真選組)が大勢いる先頭に立つ数人の男の中にヤツはいた。肩にバズーカを担ぎ、こちらを見ている。そっか、あいつ真選組だったわ。一緒に働いているから彼の本業はすっかり忘れていた。


「‥‥‥」


沖田総悟とばっちり目が合う、エプロンも三角巾もしてない隊服に身をつつみこちらをジッと見つめるその顔はいつもの毒舌クソッタレ野郎ではなくて。数時間前までお店に一緒にいたのに。何か、真面目な青年って感じがするのは気のせ「おーい、一番左の女以外は解放しろーィ」


周りが静まり返るなか、沖田総悟が拡張器で犯人に要求しだした。


「オイィイイイ!お前警察が何言ってんだァア!全員助けろォオ!」


絶妙なタイミングで犯人が突っ込む。お前(犯人)が全員助けろ発言も何言ってんだって感じだけど、それよりも沖田総悟の発言の方が今は問題である。


「そ、そーだそーだ!てめぇ本業くらい真面目に仕事しろ!コロッケ盗み食いしてることバラしたろかァア!」


「お前も何言ってんだァア!俺らに味方してどうすんだよ立場考えろ!お前ひ・と・じ・ちィイ!」


さっきの真面目に見えた彼は一瞬だったらしい、やっぱりいつもと変わらないあいつだった。私たぶん頭殴られておかしくなったんだ、あいつは悪魔だ、いい人は似合わない‥というかキモチワルイ。


「おーい犯人、そのメス豚切ってくんねーか。加工して夏に親戚と知り合いに送るんでーィ」


「誰がお中元用のハムじゃァアアア!てめっ、マジふざけんな!」


「ブヒブヒうるせーんだよメス豚、人質のテンションじゃねーだろお前、」


「お前も警察のテンション考えろ!人質いじめるとかやる気あんのか!そのバズーカはお飾りですか、あぁん!?」


「お前が邪魔するから交渉できねぇんだろィ、おーい犯人あの女の口にガムテープ張って黙ら「うるせェエエエ!」


私たちのバトルを遮ったのは犯人の男。


「お前らどっちもうっせーんだよ!何で人質と警察が喧嘩してんの、俺らの居場所ねぇじゃねーかァア!」


「「うっせーチンカス!」」


「‥ハモってんじゃねぇか!あーもうキレた!お前ら全員死ねェエエエ!」


よほどお怒りらしい、犯人の男が刀を抜いた。照らされているライトに刃が反射して光る、やばい。私たちが喧嘩したせいで興奮しちゃった‥?


「まずはお前からだァア!」


犯人が狙ったのは彼の一番近くに立たされていた佐吉。目隠しされたままの佐吉は状況がつかめない、辺りをキョロキョロしている。そんな佐吉に男が刀を振りかざす。
やばい、このままじゃ‥


「うおりゃー!!」


佐吉の隣に立っていたものの、後ろから他の男たちに押さえられて身動きが取れない私は横から佐吉を思いっきり蹴った。


「うわぁあ!」


腕がダメなら足じゃああ!という私の反射に近い行動は男の刀から佐吉を避けてくれた、佐吉がバランスを崩してその場に倒れ込む。


ざしゅっ、


「う、ぁあああっ‥!」


しかし佐吉を庇った私の足に刀が降り下ろされた、自分の目で自分の足に刃が刺さるのを見てしまった。スローモーションのような動きで切り口から血が吹き出す。


「‥マナっ‥い、いやあぁ!」


遠くで聞こえたのり子さんの叫び声といくつもの悲鳴、あわてふためく犯人たちの表情。すべてがスローモーションに見えた、


ばたっ‥


私はどうなったんだろう、足の痛みを感じながら見えたのは星のきれいな夜空。後頭部を強く打って、あぁ、私倒れんだ‥とそこでやっと分かった。


五感がどんどんなくなっていく中、最後に聞こえたとてつもなく大きな爆音と夜空を覆う煙。
きっと、沖田総悟がバズーカを打ったんだと遠退く意識の中で思った。


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