再会、そして再会
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佐吉が逃げて数分、外からパトカーのサイレンが聞こえてきた。どんどん音が近づいてくる辺り、救出に来てくれたようだ。まだ安心はできないけれど、内心ホッとした。


「ククッ、やっと来たな。ほら立て」


男は待ってましたと言わんばかりの楽しそうな笑みを浮かべながら私を強引に立たせた。殴られた出血は止まらず、今まで倒れていた地面には赤黒い血が水溜まりのように溜まっていた。着物も血と泥で汚れているし、何よりフラフラする。これマジでヤバいかも、て‥鉄分をくれ。いや輸血かな。


「さぁショータイムの始まりだ」


男が私の両腕を縄で縛り、目隠しをした。ショータイムってお前どこのマジシャンだよとか、縛りに目隠しってSMプレイですか、私はどっちかと言うとSなんで代わってもらっていいですかとか内心突っ込めている自分にまだ大丈夫だ、血が足りないだけだと変な自信を確信しつつ、私は牢屋のような部屋から連れ出された。


もしかしたら、どこかで余裕があったのかもしれない。警察が来たならパパッと解決してくれるだろうと。犯人はこの男だけみたいだし人質だって一人減ったわけだし、そう思っていたのに。


「ここで待ってろ、」


目隠しされてどこかもわからない場所に座らされた、すぐ近くで子供がすすり泣く声がする。まさか、と思った。


「龍之介、一平!?」


私の声にピタッと泣き声が止まった。そしてすぐそのあとにマナねぇちゃん?と不安と期待が入り交じった声が聞こえてきた。


間違いない、一平の声だ。久しぶりに聞いたその声に鳥肌が立つのを感じた。状況はヤバイけどちゃんと生きてた、そのあとすぐに龍之介もいると分かった私は今すぐこの目隠しと縄から解放されて二人を抱き締めたい衝動に駆られた。母性本能?いや息子にしちゃ大きすぎるなと突っ込みながらも本当に安心した、佐吉は警察に保護されてるはずだしあとはみんな無事に帰るだけだね、うん!


「マナねぇちゃん、佐吉は?」


「おれたちずっと前に離ればなれになったんだ、佐吉は‥だいじょうぶなの?」


私がいるとわかった安堵した声とは打って変わって不安そうに龍之介が聞いてきた。そっか二人は佐吉が逃げれたこと知らないんだ。


「佐吉はさっき隙を狙って逃げ「‥ここにいるよ」


私が気を効かせたおかげでな、がーっははは!と言おうと思っていた台詞はどこからか聞こえてきた佐吉の声に遮られた。
え、は‥佐吉!?


「ちょ、佐吉!何で!?」


視界が遮られているので、声でしか誰かを特定できないけど、今のは完璧に佐吉だった。でも‥まっ、えぇえ?


「‥ごめん、マナねぇちゃん。外出たらすぐつかまった」


「ハァアアアン!?」


叫んだことによって激しい頭痛に教われたが、驚きの方が上回ったらしい、痛みなんてどうでもよかった。


「‥はっ?ちょ、マジ!?佐吉マジでいんの!?」


前話で外出たじゃん、闇夜の中に消えたじゃん。捕まったって、えぇっ‥嘘でしょ!


「おまっ、私が殴られた意味ィイイイ!お腹も蹴られたんだぞ、体張らせておいて何捕まってんだァアア!」


とりあえず佐吉の声が聞こえた左の方を足で蹴った。いたっと聞こえた佐吉の他に龍之介の声も聞こえたがまぁいい、お前ら全員反省する身だ。


「ごめんって。マナねぇちゃん大丈夫?」


「大丈夫なわけねぇーだろ!ちょ‥お前ほんと何!?明日からお前だけコロッケ値上げすっからな!多めに金持ってこいよ!」


「えぇー!ひどいよそれ、おれマナねぇのとこのコロッケいつも食べてるのに!」


「だったら逃げろやァアア!コロッケの栄養ここで使えよ、じゃがいもでフル稼働させて山降りろ」


私がフラフラになってまで逃がしたのに、何でここで仲良く再会!?
さっきまでの感動はもうどこにもなかった。そこへ付け足すように言葉を発したのは勉強が得意な龍之介。


「じゃがいもはアルカリ性の食べ物だからね。栄養に比べると水分の方が圧倒的に「うっせーガリ勉。そんな情報は今いらねーんだよ」


龍之介はすぐに黙ってしまった。その頭でこっから逃げ出す方法とかを考えろ。


「ひどいよマナねぇちゃん。俺はあいうえお弁当のコロッケでここまで大きくなったんだよ」


「黙れ一平、お前はただの食い過ぎだから。10歳の体型じゃないからそれ。ただのブーデーだから。痩せろ、そしたら早く走って逃げれたわ絶対。あーもうしばらく一平にコロッケ売らねーもう決ーめた」


「えぇ!マナねぇちゃん‥おれだけきびしいよ」


ったく、どいつもこいつも‥これ私が助けに来た意味なくね?殴られて蹴られた意味なくね?


「あんたたち、何したかわかってるの!?公園で話したとき止めなさいって言ったのに、勝手に危険なことするからこうなるの!あんたたちの親はすごく心配してるし警察にも迷惑かけてる、犯人も悪いけどあんたたちも悪いの、わかる!?」


「「「‥うん」」」


「うんじゃない!はいでしょーが!」


「「「はい!」」」


沖田総悟以外にキレるのは久しぶりだと思いながらも、三人は反省してるっぽいしここでキレても仕方ないと私も少し反省した。深呼吸して自分を落ち着かせる。


「‥わかったなら、四人無事で帰るよ。わかった?」


「「「はい!」」」


さっきよりも元気でいつもの三人らしい声だった。
四人の心がひとつになった、そんな気がしたのに、


「おい、お前ら来い」


突然足音が聞こえてやって来た男に龍之介と一平が連れていかれる気配がした。泣きじゃくる二人の声が心を締め付ける。何もできない自分が情けなかった、私でも怖いのに‥二人はどれだけ怖いだろう。二人の気持ちを考えたら悔しくて悲しかった。


「大丈夫‥!四人で帰るって言ったでしょ、約束破ったら‥マジでコロッケ売らないからね!」


遠くなる泣き声に叫ぶことしか出来なくて。隣で震える佐吉の頭に頬を寄せて、大丈夫と小さく言い聞かせ続けた。


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