気持ちだけじゃ救えない
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「‥マナねぇ!マナねぇちゃん!」


遠くから聞こえた声は、慌てていた。あぁ、佐吉の声だ‥あれ?私、


「マナねぇちゃん!」


ぼんやり聞こえていた声がどんどんハッキリ聞こえてきたのと、暗闇が明けたのは同時だった。


薄暗い空間、目の前に映る四角く枠どられた窓から見えた月は大きく綺麗だった。


「マナねぇちゃん!」


体を揺さぶられ、映ったばかりの視界がぐらつく。綺麗な月を遮って私の視界に入ってきたのは佐吉の泣きそうな顔だった。


「…さ、きち?」


なぜか思い通りに口が開かなくて、途切れ途切れに発した言葉に佐吉が何度も頷いた。


だんだん視界がハッキリして、自分が寝かされていることに気づいた。


「‥ていうかここどこ?」


私はたしか、三人を探しに山へ入ったはず。そこで、えーと‥何か急に頭が痛くなって‥


「マナねぇちゃん、頭大丈夫?」


佐吉が首を傾げる。辺りを見る限りどこか建物の中みたいだ。おかしいな‥山にいたはずなのに、ていうか、


「失礼だな、佐吉よりは頭良いわバカ」


「そういうことじゃねぇよ、怪我してるじゃん!」


あきれながらも心配そうに私の頭の方を見る佐吉。え、怪我?
何だろうとおでこに手を当てて見ると、


「ぎゃぁあああ!血!え、血ィイ!?何で?ちょ‥痛いィイイイ!」


手のひらが真っ赤に染まっていた。途端に頭がズキズキ痛み出す。何これ何で?


「マナねぇちゃん、静かに!」


佐吉に口を押さえられた。一瞬静かになった空気の中、自分に何が起きたかを考える。


えーと、怪我してる(重傷っぽい)のは‥山で頭が痛くなったとき?あの痛みは殴られた‥のかな?


「ちょ、佐吉ここどこなの?龍之介と一平は?」


何が起きているか想像すらつかない私に佐吉は難しそうな顔をしてじっとこちらを見ている。顔は泥で汚れて、服も乱れている。ここは建物っぽいしただ遭難した感じには見えない。第一こんなとこで佐吉と会えてることがおかしいんだから。


「あー起きた起きた」


そのとき、背後から見知らぬ声がした。寝たままの私は状況が掴めず、頭だけ動かそうとしたけど痛くて上手くいかない。


とりあえず体を起こそうと、なぜか震えている佐吉の手を握り起き上がった。あー頭マジ痛い、ズキズキする。


「よく寝たなァ、嬢ちゃん」


目の前にいたのは怪しげな男。刀をぶら下げて手には木刀を持っている、なんちゅー欲張りな男だ。


「あんた誰?ここどこ?龍之介と一平は?」


「ハハッ、焦るなって。質問はひとつづつ」


ニヤリと笑う男の銀歯が怪しく光る。よく見れば私たちがいるのは牢屋のような檻のような場所だった。この男に殴られて、連れてこられた‥?


「‥龍之介と一平はどこ?この子の他に二人子供がいたでしょ」


「さァ?」


さァ?ってどういうことだコルァ、と心の中でキレるが言葉には出せなかった、だって武器持ってるもん。アレで斬られるわけにはいかない。ただでさえ頭かち割れてるんだ。


「お前らがいけねーんだよ?俺らの大事なモンに手ェ出そうとするから」


「大事なモン‥?」


「このガキ達が埋蔵金ーとかなんとか言って俺らの攘夷資金盗ろうとしてたわけ。お嬢ちゃんがそれを知ってたかは知らねェけど」


「‥‥‥」


なるほどそういうことか。三人が騒いでいた埋蔵金は攘夷浪士たちの資金で、それを知らずに三人が山に入って、彼らに捕まった。


「でもだからってここまですることないでしょ!?相手は子供だよ!いたいけな女(私)にまで暴力振って、ただのきんぴらじゃんあんたら!」

「「‥‥‥」」


「‥‥マナねぇちゃん、それ言うならちんぴらだろ?(小声)」


「‥しまった!いや私お弁当屋だからさ職業的に出ちゃったみたいな?(小声)」


「だからってここでまちがえるなよ、おれもはずかしい(小声)」


「助けに来てあげたんだからそういうこと言わないでよ、私怪我までしちゃったんだから(小声)」


「ごめん、あのときマナねぇちゃんの言うこと聞いてればよかった(小声)」


「反省はあとで、龍之介と一平探してさっさと逃げよう(小g「ちょっと待てェエエ!俺の存在忘れてるだろォオ!つーかいつまで(小声)で喋ってんだァア!」


急にキレだす男に佐吉が怖がって私の腕をぎゅうっと掴んだ、
負けるな私。佐吉たちは私が守ってあげなくちゃ。


でもどうすればいいの?


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