こどもは素直が一番
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「えーと‥ホウレン草とじゃがいもと手巻きのり」


のり子さんにおつかいを頼まれ、大江戸スーパーにやって来た。お客さんがいなくて店番がいらないときはのり子さんのお手伝いをすることが多い。おつかいはその手伝いのひとつ。


頼まれたものをカゴに入れながら店内を歩く。今日は買うものが少ないからラッキーだ。


「あ、」


手元のメモを見て買い忘れがないことを確認した私がレジの方へ進んでいるとお菓子コーナーで見慣れた三人組がいた。お菓子を真剣に選んでいるのか、私に気づかないらしい。大きな声で驚かしてみようとそーっと三人に近づく。


「わ!」


公共の場であるスーパーでハタチの女が大きめの声で子供を驚かすことなど聞いたことがないけど。でもやっぱりこういうのが好きなんだよ私は。


「「「わあぁ!」」」


期待以上のリアクションだ。三人とも肩がびくついている。いつも私をからかう三人はどこにもいない。ケッケッケッ。


「今日はコロッケじゃないの?」


三人がそれぞれ持っている子供用のカラフルな小さなカゴには駄菓子がいくつか入っている。


「マナねぇちゃんかよ‥ビックリした」


「おっどろいたー」


「‥おれはおどろいてないけど」


私から見れば佐吉もしっかり驚いてたけど。まぁ面白かったからいいや。


「お菓子買ってどっか遠足でも行くの?」


気が抜けた三人に私がそう聞くと、彼らは分かりやすく目を泳がせた。一平なんてカゴを自分の後ろへ隠している。ん?何か怪しいぞ。


「なんでもない。ふつうにたべるだけ」


龍之介がかけている眼鏡をグッと押す。


「ふーん、じゃあ私もお菓子買って一緒に食べようかなぁ」


三人とも明らかに普通に食べるつもりはないだろう。うまくごまかしているようだけどバレバレだ。買う気はないけど、わざとお菓子を選ぼうとすると三人は顔を見合わせてまずい、という表情を浮かべた。そして佐吉が私の前へ立ちはだかった。


「マナねぇちゃんは、み‥店番あるじゃん」


「何隠してんのか言いなさい」


「なにも隠してないよ」


いよいよ怪しい。絶対何か隠してる。目が北島康○並みのスピードで泳いでるもの。だから何も言えねぇってか?


「せっかくみんなのお菓子、買ってあげようと思ったのになー」


こうなったら絶対吐かせる。そう決めた私はわざとらしく口を尖らせて三人を見る。誰か引っ掛かれ!すると今まで目を合わさなかった一平がキラキラした瞳でこちらを見た。


「いくらまでいいの!?」


‥オイィイイイ!単純すぎるだろ、さすが食いしん坊。心なしか鼻息も荒くね?


「いくらでも。私は金持ちなのよ」


財布を見せびらかすと一平はこちらへ一歩近づいた。正直言うと今手持ち3000円だ。


「おい一平、騙されんな!マナねぇちゃんは仲間にできねぇだろ」


すかさず龍之介が一平の肩を掴んで小声で気になる発言をした。小声だけどすべて聞こえている。私、決して騙してるわけじゃないんだけど。ていうか私仲間になれないの?


「そうだ、あの宝は三人だけの秘密だって言ったじゃん」


「‥‥宝?」


「「‥佐吉!」」


佐吉の言葉に全員の動きが止まった。スーパー内に流れる音楽がやたらと響いて聞こえる。一平と龍之介はぽかーんと口を開け、佐吉は口をおさえている。


「佐吉、宝ってなぁに?」


私がしゃがみこみ、佐吉の前でニッコリ笑うと佐吉は諦めたのか私を見て一言、


「‥お菓子買ってくれる?」


少し恥ずかしそうな表情で駄菓子が入ったカゴを差し出した。




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