人が増えればツッコミも増える
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「「「いただきまァアアす」」」


正座する私の周りには笑顔を浮かべる三人。三人とは先ほどスーパーでトラブった万事屋三人である。机の上には肉と野菜の炒めもの、人数分の焼き鮭、味噌汁と白米。


「‥‥‥」


どうして私は彼らと食卓を囲んでいるんだろう。
しかも私がいるのは、その三人の住居なのである。


あのあと肉を譲ったら彼らの威圧的な態度は無くなった。というか私の買ったものがセール品や特売品ばかりだったこと、エコバッグ持参していたことが分かると、


「銀ちゃん、マナもしかしたら私たちと同じ人間かもしれないアル」とか、


「だな、高い野菜は買わずに39円のもやしが異様に多いし牛乳も一番安いメーカーのだぞ」とか、


「そんな人から肉もらって良いんですか、もしかしたら彼女もこのお肉めちゃくちゃ食べたいかもしれないですよ」とか、


三人が寄って私が貧乏女だと話し始めたのだ。口に手を添えてこちらに聞こえないようしているつもりだろうけど全て筒抜けしてるぞオイ。


「あの、」


全部聞こえてますと言いかけたとき、寄ってコソコソ話していた三人がこちらを向いた。


「し、仕方ないからこの肉分けてやるネ」


「そのもやしとこの肉一緒に炒めたら旨そうだもんなァ、優しいなァ神楽」


「僕たちキャベツとにんじん買ったからそれも合わせれば量も増えてもっと美味しくなりますねーアーッハハ」


「‥‥‥」


その前にそれは私が買った肉なんですけど。分けるのはこっちなんですけど。何その謎なツンデレは。色々とおかしな点はあるけど三人は肉を独り占めする様子はなさそうなので、どうもと一言だけ言った、言ったらこうなった。


「誤解して悪かったネ、ただの独り暮らし女じゃなくて貧乏な独り暮らし女だったアルな」


「俺たちゃもう仲間だ、肉食えよ」


「おかわりもありますからね、冷めないうちに食べてください」


貧乏だと分かった瞬間、優しくなった。相変わらず肉を食べているときはハイエナのような顔だけど、見ろこの態度の激変ぶり。


「‥‥‥」


嬉しいのか悲しいのか。どちらにしろ肉を食べれることには変わりないし良いかと食事を頂くことにした。


「‥おいしい」


正直、私も肉は久々だった。割合的には野菜の方が多いけどじゅうぶん美味しかった。


「貧乏な独り暮らし女には肉なんかじゃなくて、食卓の温かさの方が大切ネ」


「そうだぞー貧乏にしか味わえねぇ幸せなこともあるんだぞ」


「お前らが言うな!」


相変わらずズバズバと言うなと思いながらも、彼らが言ったことに納得する自分がいた。食事はただ美味しければいいわけではない、みんなで楽しく食事をすることに意味があるんだと。


今までこんな大人数で食事をしたことがなかった私にとって今感じた美味しい、というのはとても特別なことで。この気持ちをまた味わいたい、と思った。


「そういえば、あの‥大丈夫でしたか?」


騒がしくも楽しい食事を終えて後片付けを手伝おうと席を立ち上がると、新八くんが心配そうな目で私を見上げた。私はえ?と首をかしげる。なにか心配することでもあるのかな?


「いや‥この間、誘拐されたって」


言いにくそうにそう言った新八くんに、あぁ!と私はそこで新八くんが心配することが分かった。でも疑問がひとつ、


「何で新八くんが知ってるの、ニュースとか報道された?」


「いや‥あの、実は僕たちマナさんのおじいさんに僕たちが、依頼を受けたんです‥」


「えぇ!!」


さっきよりも言いにくそうな新八くんの口から出た言葉に私は思わず大声を出してしまった。え、何で万事屋が!?えぇ‥嘘。


「うるさいアル、今ピン子の台詞聞こえなかったネ!」


神楽ちゃんは私の声でテレビの声が聞こえなかったとガンを飛ばしてきた。いや、テレビの前に後片付けしろよ。何くつろいでんの。


「神楽ちゃん、テレビじゃなくてマナさんに話さなくちゃいけないでしょ、今回のこと!」


キレる新八くん、たしかに聞きたい。万事屋と今回のことがどう絡んでいたのか。それに彼らにもし迷惑かけたなら私からも謝りたい。そう思っているとジャンプを読んでいた銀さんがジャンプを閉じて口を開いた。いや、あんたも後片付けしてからジャンプ読めよ。


「神楽、テレビ消せ。マナちゃん、今回のこと全部話すから、とりあえず‥あのーイチゴ牛乳買ってきてくれる?」


「‥‥だってさ、新八くん」


何さらりとパシらせようとしてんのさっきの大江戸スーパーで買っとけよ、と思いながら私はすかさずポンと新八くんの肩を叩く。


「え、僕ぅう!?」


自分を指差して大声を出す新八くん。そんな新八くんにキレるのはテレビを見続けている神楽ちゃん。


「新八、うるさいアル!今度は卓造の台詞聞こえなかったアル!いい加減にしろヨ!」


「「「オメーがいい加減にしろォオオ!」」」


テレビの音声が聞こえる部屋に私たちのツッコミが響いた。



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