伝わってくれ


「…で、仁王先輩が柳生先輩に…」
「はははっ、なにそれうけるー」

私達は本当に他愛のない会話をしながら歩いていた。丸井と一緒にコンビニ行ったときの丸井のお菓子新製品情報の詳しさに驚いただとか、仁王の悪質ないたずらの被害がすごいだとか、柳くんのデータ量はもはやストーカー疑惑が浮上するくらいだとか。

「ほんと先輩達面白いっすよね」
「そうだね、一緒にいて楽しいもん」

本当に、一緒にいて飽きない。一人一人が個性的すぎて、クラスの人といたら思わずテニス部と比べてしまうくらい。勿論、クラスのみんなといても楽しいんだけど、なにか物足りない気がする。

「今度仁王にモノマネしてもらいたいなー」
「へえ、誰の?」
「んー…レギュラーみんなの」
「普段からやってるっすよ」
「えー見たことない」
「マネは休憩時間も忙しいっすもんね」

これでも真面目にマネ業をやっている私である。その真面目さをかって、幸村くんは私にマネを頼んでくれたんだと、思う。

「ま、みんなかっこいいし」
「なんすかそれ?」
「見てるだけで目の保養というか、癒されるというか。だから大丈夫」
「…ふーん」

何故か拗ねたように俯く赤也。

(…私なにかした?)

「名前先輩はみんなかっこいい、って言いましたけど」
「えっ、うん」
「…一番は、いるんすか」
「…ううーん…」

そんなこと聞かれても困る。みんなそれぞれのかっこよさというものがあるから、一番なんて決められない。

「…………」
「…………」
「…赤也」
「えっ」
「赤也はどう思う?」
「………何で聞き返すんすかあ…」
「だって決めらんないからさー」

赤也はすごくがっかりして肩を落としている。多分、私が名前を出して、ぬか喜びしてしまったからだろう。男の子なら誰でもかっこいいと言われたら嬉しいものだ。

「…なんか」
「ん?」
「あ、いや…なんでも」
「気になるじゃん」
「ほんとに、なんでもないっす」
「…あっそー」


(意識してんの、俺だけ?)



100628