頼ってよ


「おいしい!」

学校から歩いて10分程のところにそのケーキ屋はあった。見た目もお洒落なたたずまいで、中でケーキを食べれるようになっており、喫茶店のようだった。ショーケースに並ぶたくさんのケーキはどれもおいしそうで、丸井なんか散々迷ったあげく、3つも買っていた。中学生にしてはちょっとリッチじゃないかと思う。

「このチョコレートケーキすごくおいしいよー」
「それはよかった」

私は苺のタルトと迷って、チョコレートケーキにした。この間タルトを食べたからチョコレートにしたけど、赤也に遠慮して、値段の低い方にしたというのもある。

「ちゃーんと味わって食べて下さいね、俺が奢ってあげたんすから」
「丸井、その苺ちょうだい」
「ちょっと、言ったそばからもう食べ終わってるし!」
「早すぎナリ」
「こいつ見た目の割によく食うんだよ…って苺とんな、ばか!」
「ばかって何、ばかって!はいはい所詮出来の悪いただのばかですよー…苺うまー」
「あぁー食いやがった!」
「丸井うるさい」
「てめえが食べるからだろ!」
「そうだよ、ほかの人にも迷惑がかかるだろ、静かに」
「う、わかったよ…」

幸村くんに注意されて静かになる丸井。私が言った時は逆に大声出してたのに。

「それは苗字が苺を食べたからだよ」
「あ、そっか…って読心術…!?」
「思いっきり声に出てたぜよ」
「えっまじで?」

ま、いいけど。

「そんなに苺食いてえなら苺のケーキ買えよ」
「だって高いし、赤也に奢ってもらうんだし」

あまり遠慮しない私でも、後輩に買ってもらうのに、さすがに高いものは頼めないですよ。

「名前先輩、何食べたいんすか」
「え?」
「何を食べたいんすか」
「えっ…と、苺タルトが食べたいなーなんて…」
「すいません、苺タルト一つ」

赤也は急に席をたったと思えば、店員さんに注文しやがった。そして苺タルトを持って戻ってきて。

「はい、どうぞ」

なんて、にこにこしながら言うもんだから。

「あ、ありがと」

私は一言しか言えずに、黙々と苺タルトを食べるだけだった。


(もっと我が儘言って下さい)



100610