わからないんだ


無論、幸村にこっぴどく怒られた私達は、三人仲良くグラウンドを走らされた。

「あたしマネージャーなのに…」

ぶつぶつと文句を言うあたしに丸井が「別にいいじゃねーか」と言った。

「イケメン二人とランニングなんて早々出来たもんじゃないぜ」

丸井はこういう自信過剰なところを直した方がいいと思う。

「だろぃ?」
「はいはいそうですね」

軽く流して少し先を走る赤也の隣に並ぶ。

「赤也、さっきも言ったけど、昨日はありがとね」
「誰も先輩を送ろうとしてなかったっすからね」

口ではひどいことを言いながら、赤也は何故か満面の笑みである。
その時、いつもは働いてくれない、いわゆる第六感か、もしくは勘が働いた。
いつも通りに、働かなくて良かったのに。
働いてしまった。

「なんで笑顔なのよ…そんなに面白かったの?」
「えっ……せんぱ…」
「呼ばないで」

怒る私を赤也はとても不安げに見つめている。おそらく私の怒りの原因がわからないのだろう。別に、いい。わからなくったって。

「…帰るね」
「ちょっ、先輩!」

呼び止める赤也を無視して、私は幸村くんに、腹痛で今日は帰ると一言伝えた後すぐに荷物を持って家へ帰宅した。


(赤也なんか、知らない知らない知らない!)
(先輩、教えてよ、その理由)




101020