呼び方


「もー…苗字とかめんどいねん!いらんねん!」

いやいや、苗字は大切だと思うよ。

「白石も名前で呼び!」

真も苗字で呼んでるじゃないか。

「ほな、名前て呼ばせてもらうわ」

ははは、と笑う白石くんはとてもかっこいいと思った。

「何でも構わないですよ」
「あ、また敬語やな」

癖みたいなもんです。

「まぁ、だんだん慣れていくやろ。俺のことは、蔵って呼んだって」
「…努力する」
「ん、よろしゅう」

またにこにこする白石く…蔵くん。
いや…蔵くんより、蔵の方がしっくりくるなと思う。蔵って呼ぼう。

「ほんで、さっそくマネージャー業についてやねんけど」
「あ、うん」

その後、部活のスケジュールのプリントをもらい、マネージャーのすることなどを教えてもらった。

「…で、ドリンク作りもな」
「う、うん…」

マネージャー業は大変そうで、本当に私に出来るのか不安になった。

「そない不安そうな顔せんと、大丈夫やて」
「えっ」
「めっちゃ顔に書いてあるで」
「ほんと…!?」

慌てて顔に手をやる。勿論、本当に書いてあると思ったからではなく、そんな顔していたら駄目だと思い、隠そうとしただけだったのだが。

「…ははははっ、おもろいなあ自分!」
「え、えっ、何が…!?」
「ほんまに書いてある訳ないやん」

蔵が急に爆笑しだしたのでびっくりしたが、蔵は私が本当に顔に書いてあると思って顔に手をやったと、勘違いしているらしい。
私を一体何歳だと思ってるんだ。

「いや、そういう訳じゃ…」
「あははははは!」

真まで笑い出したんだけど。もう収拾がつかない。…ま、いっか、別に。
そんなことを思っていると、ナイスタイミングでチャイムがなった。

「ほな、俺は戻るわ」
「ほなな、白石」
「うん、じゃあまたね、蔵」
「お、おん」



(名前…不覚にも、どきってしてもうた)




100606