露顕


今月の図書当番は隣のクラスの光くんと私だった。本当なら私と、同じクラスの子でやるはずだったけど、先月の当番を光くんが何度かサボったから今月まで延びたらしい。

「あーめんどい」

光くんが隣で図書室に置いてある漫画を片手に呟いた。

「あんまり借りる人いないやん」
「だからや」

暇すぎてめんどい、と意味のわからないことを言って、漫画に目を落とす光くん。私は本が読めるから、こういう暇な時間は好きなんだけど。

「…自分何読んでん」
「ファンタジーもの」
「夢見すぎなん、ようないで」
「本の中やから、ええの」
「ま、人の趣味やからな」
「そういうこと」

私は一番ファンタジーもの本が好きだ。なぜなら現実では絶対に起こらないことがたくさん起こり、面白くてワクワクするから。自分が軽く現実逃避をしている、と思うことはある。でも、現実味をおびた話、つまり青春ものや恋愛ものは、もしかして自分にもこういう出来事が起こるんじゃないか、と期待してしまう。
特に、恋愛。私はよく一目惚れをする。すぐに人を好きになる。しかし、そこから恋愛に発展するどころか、友達と呼べる程仲良くなったことすらない。だから、そういう淡い期待は抱かないようにしている。期待した分、何もなかった時に落ち込むだけだ。

「…あ」

光くんの声が聞こえたので、顔をあげてみると、カウンターの前に、白石先輩がいた。

「苗字さん、こんにちは」

白石先輩はにこっと笑って言った。こんにちは、と返す。白石先輩の笑顔は素敵だな、と素直に思う。
先輩は、先月光くんがサボった時に図書当番を手伝ってくれた時以来、こうして光くんがサボっていないか見に来ている。そのお陰か、光くんはちゃんと当番に来てくれている。

「俺には挨拶してくれへんのですか」
「おぉ、忘れとったわ」
「…ま、俺に会いに来た訳ちゃいますしね」
「な、何を言うてるん、財前…」
「いえ、別に」

私は何やら意味深な会話をよそに、本を返しに来た生徒の相手をしていた。


(部長、わかりやす)
(ほ、ほんまに…!?)



100607