懸念


「いややっ、黄色がええー」

お母さんに部屋のカーテンのことで文句を言って、しゃーないなあ、とお母さんが部屋をでていった後、ふと、窓の外を見た。見たというよりは、見えた、と言った方が正しいかもしれない。

(えっ、もしかして、あれ…)

「白石先輩…!?」

あの、学校で有名な先輩(出会った後に知った)を見間違うなんて有り得ない。
なんで先輩がこんなところに、と思った時、隣に謙也くんがいることに気が付いた。

(謙也くんと白石先輩って、友達やったん!?)

お隣りさんである、謙也くんとは少し前から仲良くさせてもらっている。まさか二人が友達、少なくとも家で遊ぶほど仲が良いとは欠片も思わなかった。二人は謙也くんの家に入っていった。

(…………よし!)

最近図書室でよく会う、かっこよくて、優しくフェミニストな雰囲気を醸し出している先輩。
私の一番気になっている人。
先輩ともっとお近づきになるには、行動を起こすしかない。身支度を済まして、階段を駆け降りる。

「お母さーん、ちょっと出てくるわー!」

どこに行くの、という返事も聞かずに家を出て、お隣りの家のインターホンを押した。
はーい、と女の人の声がして、案の定それは謙也くんのお母さん。

「あら、名前ちゃんやない」
「こんにちは。謙也くん居ますか?」

わかりきったことを聞く。

「おるよ、早う中入り」
「お邪魔します」
「謙也ー、お客さんよー」

今行く、という謙也くんの声がして、どきっとした。

(急に来てもうたけど、何て言おう…)

謙也くんに驚かれて部屋に入るまで、私の頭の中はそれだけを考えていた。


100910