今すぐ君に逢いたい


「あ」
「ん?」

別名、掴みの門と呼ばれる校門を出てすぐ横に立っていたのは、もしかしなくても、同じクラスの白石蔵ノ介くんだった。

「あれ、まだおったん?」
「こ、こんにちは…」

同学年で同じクラスの人に「こんにちは」って…我ながらおかしすぎると思った。だが、そのくらい緊張してしまう程、白石くんはかっこよくて、完璧なのだ。

「もう帰ったんとちゃうかったっけ」
「今日は委員会の集まりで遅かったんよ」
「あぁ、そういえばそうやったな」

それで今謙也待っとんのやった、と笑いながら話す白石くん。こんなに話したのは初めてだと思う。

「…ええなぁ、放送委員」

ぽそりと呟く白石くんに、少し疑問がわいたけど、この状況をどうにかしたいという思いでいっぱいだった。
つまり、周りの視線。
こんなにもかっこよくて何でも出来る男の子を、女の子達が放っておく訳がない(よく逆ナンされるらしい)。だから、今も白石くんとお喋りしているだけで、視線が突き刺さる。

「そろそろ帰るから、じゃあね」

そう言って白石くんの前を通り過ぎようとした時、がくっと体が止まった。
見ると、右腕を白石くんの包帯がぐるぐる巻かれている左腕に掴まれていた。

「し、白石くん…」
「もうちょい、でええから」

白石くんは下を向いていた。

「いつも、思っててん」
「え、えっ?」
「登校しとる時も授業中も家におる時も、いつだって、思ってん」
「あの、白石く…」
「今すぐ君に逢いたい、って」

顔が真っ赤になるのがわかった。


(だから…もうちょいだけ…って、えっ、うわ、俺何言うてんねん…!)
(…白石くん)
(あ、の、ごめんな!ホンマにすまん!)
(白石くん!うちも思っとったよ!)
(………え、ホンマ?)



『彼からあたしへ』さま提出
100804