深海魚


「あんあんあん…」
「なに喘いでるの」
「違うよ、某ネコ型ロボットアニメのオープニングだよ」

幸村くんと一緒の学校帰り。
私は歌を歌いながら歩いていた。

「なあんだ、つまらない」

溜め息をつく幸村くん。

「幸せが逃げちゃうよ」

幸村くんは立ち止まり何か考え込むように私の方をじっと見て、少し焦った様子で言った。

「どうしよう…」

僕、一生不幸かも。

「大丈夫、私が吸い込んであげる」

私は深く深呼吸をした。
幸村くんのしあわせを肺いっぱいに吸い込む。

「それじゃあ名前が幸せになるだけじゃん」

しまった。
しかし、もう吸ってしまった。

「もう一回吐いたら…」
「いいよ」

いつの間にか幸村くんは私の目の前にいて、私は唇にあたたかさを感じた。
思わず後ずさると、幸村くんはちょっと意地悪そうに口角をあげて。

「名前が傍にいてくれたら、僕は幸せ」

それからすっごい笑顔になった。



(眩しい君よ)
(どうかいつまでも傍にいて)



110422